今日紹介する作品は、3年ほど前に鑑賞した“スイス・アーミー・マン”(よもやまシネマ354/2017・10・21投稿)という一風変わった題名の映画です。名前も?と感じますが、中身はもっと??の
何かが匂う奇想天外な物語。BESTに何故この作品をあげたかというと、いままで出会った事の無い奇抜な発想の内容でかなり強烈なインパクトを感じたのが理由です。メチャクチャ笑えるが、最後はホロッときてしまう不思議な作品です。いままで選考してきた作品とは明らかに隔たりは感じますが、わたしの好きなBEST作品としてはこれも中に入れたい逸品で、とにかく笑わせて貰いました。
さて、作品ですがきっと賛否が分かれること間違いなしですので、自己責任で興味を感じましたら鑑賞していただければ幸いです。公開当時、その年の映画祭などに出品され、その奇抜さについて行けず途中退席した観客がいたとの話しも残っています。それでもおおむね高評価で支持率は高い作品だと聞き、わたし的にはちょっと嬉しい気分になっています。
物語は「生きるとは何ぞや?」という事を、シュールな表現とブラックな会話が絶妙なバランスで構築され、わたしの中では秀逸の1本です。映画は主人公の青年ハンク(ポール・ダノ)は遭難し無人島に流れ着き、あまりの絶望感から自殺をしようとしているところからはじまる。そんな矢先にハンクは浜に打ち上げられた死体を発見。その死体がとんでもない機能を持っていることに気がつき、想像を超えるお伽噺がスタートする。こんな滑り出しからはじまり、死体は途中から言葉まで話すようになる。もうこれ以上は話しませんが、あまり理屈で追わず頭をつねにニュートラル状態にし観ることをお勧めします。結構過激な表現もあり、確かR指定だったような気がします。でもツボに入ると笑いが止まらないハチャメチャな映画です。
登場人物はごく少人数ですが、みなさん役をそれぞれ見事にこなし他に類の無い映画が出来上がっています。死体・メニーの役をなんと“ハリー・ポッター”を演じたダニエル・ラドクリフがやっています。これもファンが観たら、さぞやビックリするはずです。シリーズものの作品を続けた俳優さんはそのイメージから脱却するのが大変と聞きます。むかし007のボンド役を演じたショーン・コネリーがそうであったように・・・。ただ、この作品を観る限りでは、ラドクリフには最高の賛辞を贈ります。よくぞここまでやってくれたと言ったところです。そこは観て確かめていただきたい。顔が濃いので、ちょっと不気味な感じはしますが、途中からなんとなく愛おしささえ感じ始めます。きっと彼なりの決意があっての出演だったに違いないと思います。熱演に大拍手です。また、こんな
ぶっ飛んだ、うさん臭い映画を創造する監督ダニエルズ(ダニエル・シャイナートとダニエル・クワン)の二人に、今後の活躍を期待しています。
わたしのBESTチョイスに入った不思議な作品ですが、騙されたと思って観てはいかがでしょう。
P.S. 「スイス・アーミー・ナイフ」は、よく知られるマルチツールの多機能ナイフ。この作品の題名が“スイス・アーミー・マン”とついたのは、死体のメニーが「スイス・アーミー・ナイフ」同様様々な機能を備えていることから生まれたとのこと。お出かけには必須の観れば納得する、まるで「ドラえもん」のポケットのようでもあります。ちょびっと下品ではありますが・・・。