

5月22日以来の投稿です。コロナ禍による自粛生活の中はじめた、いままで観た映画の中から選ぶMy Best作品の紹介ブログ記事。壱作目はすんなりでたのですが、弐作目のチョイスが難しく苦労をしました。甲乙つけがたい作品が次々に思い浮かび、とても順番などつけられないと閑念。そこで出た結論が、近年観た作品でもっとも心に染みた作品を選んで観ました。
その作品名は、2015年公開のイギリス・イタリア合作の“おみおくりの作法”というドラマ映画。よもやまシネマ184にて、一度記事をアップしています。もう5年も前になるのかと、時の流れの早さを感じます。この作品は現代が抱える社会問題をテーマにしているのだが、決して表には出てこないであろう、小さな小さな、それでいて一番身近にあると思える話である。そして時代の流れに取り残され忘れられたひとたちにスポットを当て、命の尊厳について考えさせられる。
物語はロンドン市の地区民生係として働く44歳のジョン・メイという独身男の物語。とても地味で、無くてはならない仕事でありながら、評価もされない行政の裏方作業。その仕事とは孤独死した人物の葬儀を行うもの。なかなかこのような設定の人物に焦点を当てた作品はない気がします。几帳面な性格のジョンが1人1人丁寧に「おみおくり」し埋葬の処理をする。そんな仕事をもくもくとこなす彼を、上司は疎んじ厄介者扱いすらしている。このあたりは役所仕事(行政)への皮肉が込められているような演出です。そんな毎日に突然、人員整理の話しが持ち上がり、ジョンは解雇されることに・・・。
そして最後となる仕事が向かいの家で孤独死を遂げたビリーという男の案件。近くで暮らしていながら一度も言葉を交したことのない男。そんな一人暮らし男の死が、自身と重なりショックを受け、その男の人生を追いはじめる・・・。
主人公ジョン・メイを演じたエディ・マーサンがはじめて主役を演じた作品である。とても個性的な顔立ちだが、瞳の奧の温かい光はこの役にピッタリ。役のオファーが来た時、脚本を読み「計算されたアイデアや小手先で書かれた脚本でなく、真面目で誠実でとてもユニークな話し」とぜひ演じたいと思ったと、後にインタビューで答えています。この役はそんな彼の人柄が巡り合わせてくれた贈り物だったに違いありません。絶対にお勧めの一本です。
P.S. 似て否なりだが、邦画の「おくりびと」に重なるものがあります。こちらは日本に伝わる知られざる伝統をテーマにした作品でしたが、+α的要素(社会問題)を加味した作品が、「おみおくりの作法」ではないでしょうか?作品はウベルト・パゾリーニが製作・監督・脚本を手がけ、2013年「第70回ヴェネツィア国際映画祭で監督賞を含む4賞を受賞しています。エディ・マーサン素晴らしい演技です。俳優としては脇役(色々出てます)が専門の彼ですが、この作品はまさに彼のために用意された作品です。ラストシーンがたまりません。