2020.3.13
最近一番観たかった映画、“新聞記者”を鑑賞。今年の日本アカデミー賞の候補になった中で、観ていなかった作品2つの内のひとつがこれ。作品賞をはじめ3部門で最優秀に輝いた作品の、日本アカデミー賞授賞記念としてのアンコール上映である。昨年6月に公開されたこの作品は公開当時、公式サイトが断続的にサーバーダウンが生じサイバー攻撃を受けているのではとの疑いが持たれた。映画を観てまず思ったのは、「よくこのテーマで作品を創り上げ公開まで持っていったなぁ~」というのが正直な気持ち。ある意味国への挑戦ともとれる内容は、いま現実に起きている現実を合わせ鏡のように映し出した物語になっている。
原作は東京新聞記者(社会部)・望月衣塑子が書き上げた同名ノンフィクションを脚色した、社会はサスペンスドラマ。現在も続いている事件解明の追求と見えない事実の行方を、まるで紐解くような作品の進行に思わず息を飲んでしまう圧倒的リアル感である。この映画のもつ意味は単に映画という枠を超えたまさに挑戦ではないだろうか。その勇気ににまず感動を覚えると同時に、何が本当で何が嘘なのかと恐怖すら覚えてしまう作品です。こんな作品が日本でもまだ創れるのだと、人の中にある良心を垣間見た思いである。
内容はもちろん、俳優さんたちの見事な演技そして緊張感と臨場感が画面から湧き出てくる演出とカメラワークは一級品。久しぶりに記憶に刻まれる良い作品との出会いである。今年度最優秀日本アカデミー賞3部門(作品賞・主演男優賞・主演女優賞)獲得は、異論を挟む余地が無い選考では無いでしょうか。惜しくも最優秀にはならなかった監督賞・脚本賞・編集賞の制作陣にも拍手です。重厚感のある作品は久しぶりで、とても感動しました。当然の評価と間違いなく思いますが、とくにW主演の形になった松阪桃李(杉原拓海役)とシム・ウンギョン(吉岡エリカ役)の二人の演技は言葉だけで無く、こころの些細な揺らめきまでも繊細に表現しこころが打たれます。役を超え、その人物になりきってのこころの叫びが響きます。カメラアングルにも細かい拘りが上手に反映され、見事としか言えません。また松阪くんが素晴らしい役者になったと実感します。これから日本を代表するような役者にきっとなって行くのでしょう。そしてジャーナリストとひとりの人間としての葛藤を見事に演じたシム・ウンギョン。この人は本物だと、この作品を通し確信をしました。つい先日観た“架空OL日記”にも出ていましたが、ピュアな性格が画面から溢れでていてとても印象に残っていたばかり。韓国ではすでに高い評価を獲ている新進の女優さんですが、間違いなくこれから人気がでるに違いありません。日本語も英語も堪能となれば、活躍の場は世界規模ではないでしょうか?これからの活躍応援しています。脇を固めていた俳優陣では内閣府の多田(上司役)を演じた田中哲治さんが、秀逸でした。ピリピリとした高圧的な威圧感が実に恐かったです。立場を貫くエリート官僚・多田がラストで言い放つ杉原への言葉
「この国の民主主義は形だけでいいんだょ!」は、忘れられないセリフになりました。この言葉を噛みしめた人はきっと多いはず・・・。さて、この国日本はいったい何処に向っているのでしょうか?考えさせられるとても良い機会をいただき感謝です。みなさんにも絶対に観てもらいたい作品です。