銭湯探訪49
浅間湯「せんげん湯」(練馬区栄町38)
2020.2.19しばらく空いてしまった巡礼の銭湯巡り。50軒目目前での足踏みに、けじめをつけるべく出かけた先は練馬区江古田。ここは30年ほど前に度々足をはこんだ思い出の街。大切なひとが住んでいた街の風景は、当時の面影を残しつつもかなり変ってしまいマンションが駅前に立ち並ぶ。駅舎もモダンになり、ここがあの江古田という印象。江古田駅周辺は日大芸術学部のキャンパスを筆頭に武蔵野音大、武蔵大学と多くの大学が集まり学生街と住宅地が溶け込んだ町並みが拡がるところ。

北口駅前を出るとすぐ目に入るのが浅間神社の鳥居。まさに街の守り神と言ったところ。富士信仰の神社は境内の奧に富士塚があり、由緒深き神社と資料に記載されている。その昔神社の所有をめぐり小竹町と江古田町の争いがあり、夏にもかかわらず雪が降る天変地異が起こったそうである。それを気に双方の町は争いを止め共有の氏神として祀ったという伝説が残っています。銭湯を訪ねてきて、思わぬ歴史の勉強をさせてもらった。コレだから銭湯巡礼旅は止められません。

さて、浅間湯(せんげん湯)は浅間神社の脇道を2~3分真っ直ぐ行ったところにあるのだが、裏手になるようで四角い煙突が突然マンションの建物の後から姿を現す。威風堂々とした佇まいはこれぞ街のシンボルといったところ。開業時間が4時ということで、ちょっといままでにない営業時間に戸惑いながらも、その時間を利用し街をブラブラ。30年という時間の流れは、街を変化させ驚きと同時にちょっと寂しい気持ちが湧いたわたし。年をとると何故か過去を振り返ることが多くなる。過ぎた時間は戻ってこないのですが・・・。気を取り直し歩くと、街のいたるところに昔のままの風情も残り、時代の変化にも負けず生きている街の息吹を感じる事が出来た。路地裏にはいると美味しそうな居酒屋さんがいっぱい。むかしを思い出しながら歩いた街並の中、覚えているお店も何件か見つかりその瞬間はタイムスリップ状態になる。いまでも頑張っている姿に、ちょっぴり感動。駅の周辺をぐるりとし、時間を見計らい浅間湯へ・・・。

ネットであらかじめ調べてはいたが、玄関前には噂の狸がドンと立ち睨みを利かせていた。「これがシンボルの???」タヌキか?と思わず見入ってしまった。なかなかユニークなお出迎えである。さっそく中に入るとおばちゃんが笑顔で迎えてくれた。まずはいつものスタンプをもらい中へと・・・。庶民的な感じの地元に根付いた感じのレトロな佇まい。ビル銭湯とはいえ、なんと90年以上の歴史を誇るお風呂屋さん。学生さんが多く住む街の銭湯は、下宿している学生さんたちにとってはきっと身も心も暖っためてくれる場所だった事でしょう。天上は低いが清潔感ただよう空間がそこにはありました。

浴場に入ってまず目に飛び込んできたのが、富士山ではなく、不思議なタイル画の絵。モダンというか??いままで観たことのない雰囲気の抽象的表現が男湯と女湯を跨いで描かれていた。調べてみると、先代がリニューアル時に「どうせならユニークな壁画を」と、土地柄もあり芸大の先生にデザインを依頼したとの事。テーマは“家族愛”との事だが、抽象画ということで人それぞれの捉え方で楽しめばそれで吉と言ったところ。色合いがカラフルでなんだか元気を貰える感じがします。お湯は地下水を汲み上げての鉄分豊富なお湯らしく、身体の芯までポッカポカ。サウナもあるので時間のある人には、たまらないオアシス。わざわざ遠出してまで来たかいがあった江古田の銭湯。思い出と一緒に新たな発見もあり、大満足な一日になりました。また、訪ねてみたいお風呂屋さんに出会う事が出来ました。