2020.1.24
初の実写映画化で話題のミュージカル“キャッツ”を初日公開に合わせ鑑賞。ミュージカルの金字塔とも言われる“キャッツ”は、1981年のロンドン初演から今なお世界中で愛され全世界累計観客動員数8100万人と言われ日本でもお馴染みの大ヒットミュージカル。劇団四季による国内通算公演も1万回を突破する舞台である。残念ながら舞台は1度も観た事のないわたし。それでも初の実写映画化となれば、当然観ないわけには行かない。物語の内容すら知らないわたしは、好奇心の塊でまるで主人公の猫ヴィクトリアそのもの。監督は“レ・ミゼラブルで歴史的ミュージカルの映画化を成功させた名監督トム・フーパー。制作陣もスティーヴン・スピルバーグを筆頭に世界最高の制作陣が集まった。そして個性豊かな猫たち(ジェリクル・キャッツ)を演じる面々が凄い。映画、音楽、ダンスなどの多彩なバイプレーヤーの磨き抜かれた演技、歌、そしてダンスは圧巻である。舞台とも違うその演出は観客をあっと驚かせ、夢の世界へと誘う。”猿の惑星“でお馴染みの視覚効果技術のモーションキャプターが、俳優陣の演技をより豊かに表現しそれは本物の猫のような不思議なリアルに包まれていた。そんな作品だから、とうぜん悪いはずも無くフィナーレまであっという間に誘い込まれる。はじめて観たわたしは、エンターテイメント性が詰まった作品に酔いその面白さだけで無く、猫に対する思いが少し変ってしまった。物語の中では、個性豊かな猫たちが思い思いの個性を爆発させ、自由奔放に生きている様が写しだされ人間もこんな風に生きられたら・・・。とつい思ってしまった。ただ、この作品アメリカでは大コケし、かなりの不評だそう。当然のことながら舞台と比較されるのはもちろんだか、そもそも映像にするとリアルさの追求と俳優さんたちの究極の技が嘘っぽくなるのは否めない。舞台では直接伝わる技術や歌の凄さが1枚フィルターがかかった状態になる。これらは舞台をこよなく愛するファンには、どう移るのでしょうか?わたしは舞台を観ていないので何とも言えませんが・・・。映画を観たとき舞台を鑑賞していた”レ・ミゼラブル“で、わたしもちょっと感じた違和感である。舞台と映画、表現の違いはあれど、これを同じ感覚で良さを望むのはいかがなものでしょう。わたしはそれぞれのよさがあり、それを認めたうえで観るのが最善の鑑賞マナーだと考えます。
映画の中、冒頭でCGを使った演出でネズミやゴキブリが出てきてちょっとブラックユーモア的な表現がありましたが、個人的にはちょっと笑えませんでした。このあたりが、表現上の大きな課題かも知れません。似た演出をするティム・バートン監督くらい、徹底するなら面白いのですが・・・。
主人公のヴィクトリアを演じたフランチェスカ・ヘイワードの愛らしさとダンスの素晴らしさは圧巻で、グリザベラ役のジェニファー・ハドソンの歌唱力は胸を打ち思わず涙を誘います。超一流のエンターテナーたちが、繰り広げる、猫たちの物語は個人的には充分過ぎるほどの感動をくれました。賛否の批評はあれど、まずは自身の目で確かめてはいかがでしょう。
P.S. 長老猫のオールドデユトロミーを演じた、ジュディ・デンチはやっぱり凄い俳優さんだなぁ~~と痛感しました。存在感は他を圧倒しています。また、ガスを演じたイアン・マッケランもしかり。ベテランと若手のコラボがこれほど見事に融合した作品はそうはないでしょう。舞台には無い楽曲「ビューティフル・ゴースト」を創り、自らも出演しているテーラー・スウィストのシーンも見逃せないワンシーンです。曲も「メモリー」に匹敵するほど印象深い曲になっています。