2019.12.05
ギンレイ2本目の作品は“COLD WAR”と言う作品。これはさすがにノーチェックの作品で、ギンレイに来なければ出会う事が無かったポーランド・フランス・イギリス合作の恋愛映画。恋愛映画と言っても単なるラブ・ストーリーとは違い、かなり重めの作品でした。モノトーンで描かれた映像表現は写真集をめくるような溜め息がでる美しさ。作品は2019年度、カンヌ国際映画祭・監督賞を受賞し、その年のアカデミー外国賞ほか3部門でノミネートされている。全編モノトーンで撮影された作品は、音楽(民族音楽~ジャズetc)を巧みに組み入れ、光と影のコントラストを強調し、五感を刺激する仕上がりになっています。第二次世界大戦終結後のポーランド冷戦時代を背景に、数奇な運命で出会いと別れを繰り返す男女のこころの糸を繊細に描きだし観客を翻弄させる。1949年から1964年の15年間で再会と別れを繰り返す二人。最後に選んだ道の行方は・・・。深く愛し合っているのに、何故こんなにも心がすれ違ってしまうのか?観ていて何かモヤモヤし苛立ちさせ覚えてしまう。
主人公の二人は歌手を夢見るズーラ(ヨアンナ・クーリク)とピアニストのヴィクトル(トマッシュ・コット)が音楽舞踊団のオーディションで出会い恋に落ちるところからはじまる。互いに才能に恵まれた者同志だが、性格は正反対。そんな二人が織りなす恋愛ドラマは、15年の時を猛スピードで駆抜ける構成が波瀾万丈の人生を紡ぎ出す。観ている側が油断するとあっという間に置いてけぼりにされてしまうので要注意。それにしても男と女に心の動きとは、中々解けない問題のようで身につまされる感覚を覚えたわたし。運命なんて甘い言葉では処理できない現実の重さがそこにある。みなさんはこの二人のどちらの気持ちに近いでしょうか?男と女の違いみたいな単純な図式では計り知れない、複雑な感情が絡み合いラストを迎えます。愛し合うという事は、最終的にはこういう結論になるのでしょうか?ある意味、羨ましくもあり、哀しくもある物語でした。
ポーランド映画と言えば巨匠アンジェイ・ワイダ監督が思い浮かぶ。若い頃名画座で“大理石の男”を観たのだが当時は内容についていけず、途中で眠りそうになったことが思い出される。その後年齢を重ね”灰とダイヤモンド“などを鑑賞し政治色の強いテーマが多いのではあるが沢山の感動をもらった。今作”COLD WAR”を撮ったパヴェウ・パヴリコフスキ(ちょっと言いづらい???)監督さんは、ワイダ監督を彷彿させます。今回は監督・脚本を手がけていますが前作、”イーダ”で第87回アカデミー外国映画賞を受賞しアメリカはもとよりヨーロッパでも高い評価を受け名声を不動のものにしたとの事。この作品”イーダ“に歌手役として出演していたのが、ヨアンナ・クーリクだったと聞き、まだ観ていないわたしの心は強く波打ちざわついています。”COLD WAR”主演の二人は美男美女。とくに彼女の憂いに満ちた何とも言えない雰囲気と表情は、それこそ五感に響きます。歌声も美しく、歌手でもあるという事実に納得。映画の中で何度も聞かせてくれるさまざまなジャンルの歌は、ストーリーをも凌がしこころに染み込むものでした。大好きな女優さんレア・セドゥにちょっと雰囲気が似ていて、とても透明感のある印象に心引かれました。この人もこれからの活躍がとても楽しみな女優さんのひとりになりました。