2019.12.05
ギンレイホールに足を運んだ。今日は満を持して2本立てに挑戦です。前にも書きましたがこちらの2本立てチョイスは、驚くほど緻密で厳選されています。支配人の目が肥えている証拠で、観客にとっては嬉しい限り。
さて1本目は“ワイルドライフ”。見逃してしまい最近では一番観たかった作品のひとつ。雄大なタイトルとは裏腹に、1960年代のモンタナ州の田舎町が舞台となる。理想の暮らしを夢見て移り住んできた家族の絆をテーマにした作品は、ごく普通の家族に起こる家族の葛藤を少年の目を通し繊細に描かれている。主人公の少年ジョー(エド・オクセンボールド)、と母ジャネット(キャリー・マリガン)、そして父ジェリー(ジェイク・ギンレイホール)の三人によるほぼ三人称の物語は美しいポートレートをめくる様相で進んでいく。父親の失業が切っ掛けで崩れはじめる家族の絆。両親は互いに深く愛し合い、少年ジョーも両親を心から愛してやまない。思い描いていた理想が壊れた時から、その関係が徐々にほころびはじめて行く絆。それぞれの心情が手に取るように伝わる長回しでの撮影は、見事に伝わり観る者のこころに沁みてきます。父のプライド、母の不安と孤独、そして少年の戸惑いと苦悩を三人の俳優さんたち見事に演じています。けっしてだれも臨んでいない不幸に、進んでいく過程をジョーの目線で追いかけられる物語は胸が締め付けられる。三人の俳優さんはみな、多くの映画賞で評価されているひとたち。母親役を演じているキャリー・マリガンはとても好きな俳優さんのひとりで、その度に違う側面を見せる若手の実力派俳優。愁いに満ちた表情で母親が抱える不安と孤独を、本当に見事に演じますますファンになりました。はじめて彼女を観たのは、ノーベル文学賞を受賞した“わたしを離さないで”。この作品はわたしの中では忘れられない感動をした一本。それから年月が経ち、彼女が母親役を演じる歳になっても輝きを増している事が本当に嬉しい。ジョーを演じたエド・オクセンボールドの繊細な表情にまるで自身のように一喜一憂してしまう。これからが楽しみな俳優さんは期待大である。
元には戻らない家族の形だが、ラストシーンは感動です。優しさが溢れていて、静かに涙腺を緩めじわ~っと涙を誘います。映画館に足を運んでほしい作品ですが、もし見逃したら来年DVDが販売されるようなのでそちらを・・・。
P.S. タイトルを“WALD LIFE”としたのを考えてみた。家族が暮らすモンタナの田舎町は雄大な山々に囲まれた大自然に溢れた街。そこで暮らす三人の生活は平凡そのもの。そんな中で起こる出来事は地球規模で観れば、ちっちゃな出来事である。それでもひとは前に進み生きて行かなければならない。ひとの人生には大きさなどなく、どう生きたかが大切なのだと、わたしは感じました。みなさんは名にを感じるでしょうか?