

2019.1.03
年明けの3日、2019年初の映画鑑賞に銀座へ出むいた。街は新年の買い物客で溢れ、さすがの賑わい。人混みをさけ目指した先は「シネスッチ銀座」。昨年末に訪れたばかりだが、今日は昨年見そこなっていた作品“日日是好日”を観に来ました。樹木希林さんが残した人生最後にあたる作品のひとつ。病魔と闘いながら数本の映画を掛け持ちしていた樹林さん。その中の一本にあたる今作品は、一般上映を終えこの劇場に戻って来ました。上映から随分と時間が経っているにもかかわらず、劇場内は満員。客層は中高年が中心だが、正月の3日にこれだけのひとが集まるのだから希林さんへの哀悼と人気が窺える。
希林さんが亡くなり、3ヶ月が過ぎたのだがいまだ実感が湧かない。スクリーンに映し出される姿は凜として輝き、その一挙手一投足のすべてがわたしたちに感動をいまもくれる。どんな作品に出ても自分の役割をしっかり踏まえ、演じきる俳優さんがどれだけいるのだろう。そう言う意味では俳優希林さんを失った映画界の損失は大きいのではないでしょうか?まだまだ希林さんの出演する作品を観たかったファンは多いはず・・・。
昨年公開された3本の作品のうち、今作品は2本目になる。見終わってまず感じた素直な感想は、日本人に生まれたことに対する感謝と喜びである。日本を代表する文化のひとつ「茶道」を背景に、日常の中にある憂いをきめ細かやかに紡ぎ出した作品はジンワリとこころに沁みてくる。物語から時間の流れに飲み込まれ、見失っていることの多いことに気づかされハッとさせられる。気負いなく淡々と進むお話は、時の過ごし方の大切さをあらためて考えさせられる。映像が映し出す四季の美しさは言うまでもなく、「茶道」の持つ奥深い世界に触れ、ひとが創りあげる茶道の所作の美しさに息を呑んでしまった。こころの乱れがそのまま出てしまう世界は、まるで映し鏡のようで身が引き締まる。個人的な感想だが、道と名のつく世界に身を置くわたしにはただの映画ではなく、まるで教科書みたいな作品との出会いとなりました。「習うより慣れろ」という言葉はよく使われるが、この作品内での使い方には本当に説得力があり頷いてしまう。掛け軸の書、茶道具や茶碗、床の間の生け花、振る舞われる和菓子、その全てが本当に美しいと感じられる。絶妙なバランスがそこのあり、これが“わびさび”という世界なのだろうと思えた。ラスト近くで“日日是好日”という書を眺め主人公典子(黒木華)が呟く「そう言う意味か」という瞬間、日本人で良かったと心底おもいました。ぜひ、作品を観ていただき忘れているこころを取り戻してはいかがですか?最後にこんな穏やかな日々を送るのは無理でも、気持ちのどこかに留めて置くだけでも毎日が輝いて見えるようになるかも知れません。
P.S. 樹木希林さん「ありがとうございました、そしておつかれさまでした」。こころからご冥福をお祈りいたします。まだ、観ていない“モリのいる場所”、ぜったい観ます。これからも永遠にわたしたちのこころに残り、感動を与えてくれることに感謝します。