

2018.12.27
久しぶりに銀座に出向いた。師走の銀座は以外と落ち着いていて、さすが銀座という感じ。何がさすがって、ちゃらちゃらした人がいない大人の街ということ。ちまたでは景気は上向きと言っていますが、それもあまり感じません。人通りも思っていたほど多くなく、落ち着いた年の瀬です。
さて、今日観に来た作品は“メアリーの総て”。前からちょっと気になっていた作品で、あの怪奇小説「フランケンシュタイン」の生みの親(原作者)を題材にした映画です。「フランケンシュタイン」と言えば、アメリカを代表する怪物。わたしがすぐ頭に浮かぶのは、怪獣映画「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」。東宝の怪獣映画の中では、ベスト3に入るわたしの評価です。後思い出すのは、水木しげるさんの描いた「ゲゲゲの鬼太郎」の日本の妖怪と西洋の妖怪との大戦争。個性豊かなキャラたちがそれぞれの特技を生かしての攻防戦は、それはそれは子どもたちのこころを掴んで離しませんでした。と言ったところがわたしの中のフランケン。後は怪物くんかな・・・。実は単体での「フランケンシュタイン」映画は観たことがなく、イメージでは悲しい怪物という感じです。そう言えば小さい頃TVドラマで観た「恐怖のミイラ男」の最期が悲しくて、泣いた事を覚えています。
さて、映画ですが中々の重厚感で気品さえ漂う質の高い作品でした。原作者メアリー・シェリーが18歳という若さで生み出した小説「フランケンシュタイン」が生まれるまでの半生を描き出しています。まず驚いたのが書き上げた人物が女性だったということ。そして見終わると、「なるほど・・・」という気持ちが湧いてきたこと。この作品に巡り会わなければ、一生こんな物語の誕生秘話を知ることはなかったでしょう。地味な作品ですが、映画の持つ役割(歴史解明)を充分はたした作品に仕上がっています。妄想の中で「フランケンシュタイン」の姿(昔の映画作品?)が、ちらっと出てきますが、あくまでも演出効果のひとつ。見終わると人間の業の深さと身勝手さに打ちのめされ、世の中で一番恐い怪物は人間だと言うことを思い知らされます。自身に起きた辛く悲しい境遇を反映させ怪物(フランケンシュタイン)を生み出した、メアリー女史の反エネルギーに驚かされます。怪物をテーマにした作品の多くは、たいてい悲しいラストを迎えます。ただ恐いだけでなく、その裏側にある真実の深さと重さを伝え、観るものに共感を投げかけます。そして自身の生き方を見直すきっかけすら喚起してくれます。ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、わたしはこの作品“メアリーの総て”で感じました。時代背景を丁寧に創りあげた美術や衣装など、観るところは至る所のにあり歴史の勉強にもなる作品です。即「フランケンシュタイン」の原作を読みたくなりました。主人公メアリーを演じたエル・ファニングは何度かお目にかかっていますが、少女さを残しながらもしっかりと大人の女性に変貌していることが見て取れます。上品な顔立ちの彼女はお姫様役が似合うひと。そんな彼女がひとつ殻を破った作品と言えるのではないでしょうか?これからの彼女の出演作品が楽しみになりました。