

2018.10.22.
気になっていた作品“クワイエット・プライス”。公開されてから大分時間が過ぎてしまったのだが、劇場を探し日本橋へ。SFホラー作品は数多く、傑作も多い。今作品は予告編で観たとき、絶対観ようと思っていたが近くの劇場では公開してなく気がつけば見逃すところ。
最近観た作品では“ドント・ブリーズ”や“ゲット・アウト”がとても印象に残っているが、これらと同じ臭いを感じた。五感を刺激するような創りは、恐怖心を掻き立てられ非日常を味わうことが出来たまらない。視覚や聴覚に訴えてくるホラー作品はもちろん多いが、今作品は聴覚を題材にし見えない恐怖をさらに倍増する。静かに物語が始まり、手話によるコミニュケーションで繋がる家族がスクリーンに映し出される。アメリカの田舎町に暮らす一家が主人公の物語は、声を潜め息を詰まらせ「音を出さない」というルールの中生きている。何の説明もなくいきなりそんな世界へ飛び込む観客も、訳も解らず息を呑む。これぞホラー映画の醍醐味で、いきなり画面にひきずり込まれる。そして始まるとテロップで「何かがやってきて89日」と表示される。街は静まりかえり人の気配はない。ここで観客は世界の終焉を何となくイメージする。見事な導入演出であっという間に主人公たちと一体化する感覚を覚え、ドキドキする感覚が増幅していく。89日目がはじまりアッという間に、家族の一番末の息子ボーが犠牲になる。一瞬の出来事で、なにも見えないが家族はその現実を目の当たりにし深く傷つく。ここから物語は進みラストへと続いて行きますが、出演者はこの家族と老人ひとり。後はだれも出てきません。久しぶりに見えない恐怖と、してはいけない恐怖(無音世界)に挟まれホラーを満喫しました。
それから約一年が経ち、472日と473日の2日間が描かれます。凝縮された時間が後半の展開を駆け抜けますが、エミリー・ブラントが演じる母親エヴリンがこどもを身ごもりっていることに驚かされます???これだけで恐怖心が倍増ですが、(ウッソ~ッ!この状況下で?)といった感じです。さてラストはいかに・・・。
エヴリンを演じたエミリー・ブラントは好きな女優さんのひとり。時に勇猛果敢な女戦士、時にアルコール依存症で心病む女性と、幅の広い演技力で観る度にその魅力を発揮する女優さん。今作でも張り詰めた緊張感のある演技を魅せ圧巻です。また、子ども役の二人も素晴らしい演技でした。長男役のノア・ジュプは“ワンダー、君は太陽”で世界が注目する子役ですが、今回も見事に繊細な役作りをしていました。もうひとり娘リーガンを演じたミリセント・シモンズが本当に素晴らしい演技をし存在感を表しています。彼女は役そのままで聴覚障害を持っているが、多くの作品で高い評価を得ているとのこと。この作品ではまさにキーパーソンの役どころを演じていて共感を呼びます。
P.S. 正直な感想をちょっとだけ言いますが、謎の生物(クリーチャー)が、はっきりと姿を現してから別次元の物語になってしまいちょっと残念に思いました。もっと違った表現はなかったのかと、生意気ですが思ってしまいました。SFは表現も落としどころも本当に難しい、作り手の覚悟が大切。名作にも愚作にもなる、諸刃の刃。前半が良かった分、ちょっぴり不満の残る結果でした。シャマラン監督の“サイン”を思い出してしまいました。