2018.9.25
2本目に観た作品は”フロリダ・プロジェクト“。題名だけ聞くと何だか創造もつかない。ところが見終わった後も、何故この題名がついたのか???のわたし。副題で「真夏の魔法」とあるが、こちらの方ある意味納得のいくネーミングである。タイトル(題名)は、本もそうだが重要な役割を担う。説明過ぎても駄目だし、かといってあんまり飛びすぎても心に響かない。この落としどころが実に難しい作業なのである。
後で思ったことだが今回の作品は本題と副題のペアで、なほどと思わせている気がする。副題は日本の映画配給元がつけたのだろうが、オリジナルのタイトルを壊さないよう配慮された気遣いが感じられる。いきなり小難しい話しからのスタートになりましたが、これから感想をふくめ話をしたいと思います。
さて、物語はフロリダのディズニー・ワールド近郊のモーテルで暮らす子どもたちと、その親たちやまわりの大人との日常が描かれている。主人公はシングルマザーのヘイリー(プリア・ビネイト)と、6歳の娘ムーニー(ブルックリン・キンバリー)。けっして褒められるような生活を送っているわけではないが、懸命に寄り添い必死に生きている親子がそこにいる。そして二人が暮らすモーテルの管理人ボビー(ウィリアム・デフォー)がそっとより添い厳しくも暖かく見守っている姿を重ね映し出しながら進む。ムーニーの明るく無邪気な性格が、ともすると暗くなる現実に光を灯し救われることしばしば。母親のヘイリーは客観的に観れば、間違いなく自己中の駄目親。事情はあるにせよ決して褒められる親とは言えない。そのだらしない生活ぶりが、矢継ぎ早に描かれちょっと不愉快にさえなる。それでも娘ムーニーにとってはかけがいのない存在であることが、しっかりと彼女の(*^o^*)が表している。そしてどうしようもない母親ヘイリーだが、だれよりもムーニーを愛していることが良く解る。このふたりに未来はあるのか・・・?
昨今NEWSで報道されるDVや育児放棄といったことは描かれておらず、健全とは言えないが賢明に生きようとする親子の絆が胸をうち、ラストは深く考えさせられる。映像も美しく、舞台となるフロリダの街がポップでカラフルに写し出され、内容の重い雰囲気を払拭する演出になっているところは見事です。アメリカが抱える「光と闇」を浮かび上がらせた作品は、現実を考えるためのテーマとして訴えかけてくる。思わぬ拾いものをし、とても良い時間をもらったわたしです。
P.S. 管理人役を演じたウィリアム・ディフォーがこの作品でアカデミー助演男優用にノミネートされています。その素晴らしい演技はいぶし銀の輝きで、観客を魅了します。観ていただければ納得です。ムーニーを演じたブルックリン・キンバリーも子どもとは思えない見事な役者っぷりで、末恐ろしい気がします。どんな俳優さんになって行くのか、とても楽しみ・・・。
※「フロリダ・プロジェクト」とは、60年代に始まったディズニーのテーマパーク開発計画を指す言葉とのこと。監督は幸せの象徴である”魔法の国“を皮肉にも明のシンボルとして位置づけ、そのそばで生きる貧困者の闇の現実を見事に対比させ秀作を生み出しました。