

2018.9.25
ここのところペースダウンしている映画鑑賞。いろいろ訳もあるが不徳の至る所と雨の中、飯田橋に足を運んだ。見逃していた作品を観たいと思い立ち、ギンレイに朝一で・・・。二本立ての内一本が目当てだが、今日は頑張って二本観る事に・・・。
さて目当ての一本は“君の名前で僕を呼んで“。昨年アカデミー賞に四部門でノミネートされた作品で、うち見事脚本賞を授賞。作品は1980年台のイタリアを舞台にした、17歳と24歳の青年が織りなすひと夏の情熱的恋の物語。同性愛を描いた作品は、いまやそう珍しくもなくなった。いまだに差別はあるものの、昔に比べれば信じられないくらい人権も理解される時代。同性愛(LGBT)を描いた作品は、いままでも多く描かれその多くが良作ばかり。近年では“アデル、ブルーは熱い色”“チョコレート・ドーナツ”“ダラス・バイヤーズクラブ”“ムーンライト”“キャロル”と上げれば切りがないほどである。みなこころに残る傑作で観て損はない。
さて、今回の“君の名前で僕を呼んで“も間違いなく傑作と言える作品だ。同性愛に興味はないが、ひとを好きになるのに境がなくても仕方のないことだと思える。ひとはだれかに支えられ生きる生きもの。男同士であれ、女同士であれ互いが必要であるならそれはそれで自然なことと映画は描いています。物語はイタリアの避暑地を舞台に、静かにそして淡々と進んで行く。ピアノの旋律と美しい風景が全体を包み込み、主人公二人、エリオ(ティモシー・シャメラ)とオリバー(アーミー・ハマー)の繊細なこころの動きを紡ぎ出し進んでいく。いっしょに過ごす時間の中、次第に引かれて行くどうしようもない気持が痛いほど切ない。衝撃的なシーンも織り込まれているが、自然体で描かれ違和感を感じさせない。二人が中心で物語はラストへと向うが、終盤にエリオが父親とする会話が本当に沁みてきます。こんなにも深い愛もあるのだと思わされる名シーンになっています。LGBTの問題は最近でも多く取り上げられ、日本(某議員の発言)でも話題になっています。根強い差別の壁は簡単には解決しない現実。どう受け取るかは個人の問題だが、こう言う作品に触れる度「愛」という言葉の意味を考えてしまう。
長回しのラスト、暖炉の前で流すエリオの涙の美しさにわたしも涙してしまいました。結構長い表情のアップが続きますが、その分彼の想いの深さが伝わるとても良いシーンでした。この作品もきっと語り継がれる一本となる事でしょう。