2018.5.28
フランシス・F・コッポラ監督の映画史に残る名作“地獄の黙示録”を鑑賞。昨年からはまっている“午前十時の映画祭”。往年の懐かしい作品を再びスクリーンで観れる喜びを、全身で楽しんでいるわたし。午前10時という時間帯のためか、それとも懐かしい映画を観て青春時代の思い出に浸りたいのか劇場内はほぼ高壮年のひとたちで埋まる。それぞれの想いを胸に足を運ぶのはわたしも同じ。名作をまとめてくれるこの企画は、ファンにとってはたまらない贈り物。見落としてしまった作品をスクリーンで観られる喜び、そして昔感動した作品にまた触れる喜び。「ありがとう」の言葉しか見つかりません。 さて、400本目に選んだ“地獄の黙示録”は、39年前に公開されわたし25歳の青春真っ只中で観た思い出深い作品。作品はアカデミー賞をはじめ多くの賞を手にし、高い評価を得ての公開となったもの。ベトナム戦争を背景にした作品は数あるが、コッポラ監督の渾身の作品はそれまでには観たことのない、独自の映像表現と音響効果を駆使した贅沢きわまりない作品となっていました。独創的な脚本により、ある意味戦争映画の枠を超えてよく解らない作品としてわたしの中では残っている。その意味を39年の時を経て、確かめてみようと思ったのが今回の鑑賞理由である。 改めてこの映画のことを調べてみた。原作はイギリスの小説家ジョセフ・コンラッドの代表作「闇の奥」という、アフリカを舞台にした西洋植民地主義時代の暗い側面を描写した体験談である。この話を当時社会問題になっていたベトナム戦争に重ね、舞台背景をベトナムに移しての創作となったのが“地獄の黙示録”である。内容は戦争という極限の世界で、失って行く人間の理性の象徴としてジャングルの奥地に王国を築き上げた元軍人(カーツ大佐)の暗殺をテーマにした反戦映画である。小説の主人公クルツをカーツ大佐(マーロン・ブランド)に変え、当時の世相に反映した人間の狂気を創造豊かに描いてみせた。だれもが持っているであろう人間の中に潜む狂気。理性をも壊す究極の状況(戦争)でひとが壊れて行くさまを見せつけられる。わたしは今回再鑑賞で感じたのは、その芸術性の高さから虚像と実像の境を見失ってしまう事実。よりディフォルメされた表現に頭の中が???で追いつくのがやっと・・・。リアルだがリアルでない。そんな印象が強く残ったのは事実。前半は戦争映画で後半はファンタジーのような作品である。ただ戦争をこんな表現もあるのだ、という形で創造してみせたコッポラ監督の凄さは本物だと痛感した。そして映画監督の枠を超え芸術家になったとさえ思わせる作品は、80年代を代表する映画となった。ただ評論家たちは、この映画を傑作と呼ばず快作と呼んだのは、実に面白い話しである。 人間の犯す愚行を代表する事実が戦争。いままでもたびたびテーマになり数多くの名作を残してきた。だが、“地獄の黙示録”はどの作品とも比べようのない作品となりその名を映画史に刻みました。好き嫌いがはっきりと分かれる作品には間違いない。時間とお金がかかった作品であることは間違いない。芸術性も高くそしてエンターテイメント性も併せ持つ、まれな戦争映画であることは観れば納得である。みなさんはどうこの映画を捕らえますか?言いたいことが沢山あり、まとめきれないジレンマに襲われる。そんな作品でした。 話しは変わるがこの作品について調べてみると、エピソード(製作秘話)の面白いこと。でるはでるはのてんこ盛り。よくぞ公開までこぎ着けたものである。ひとつふたつ拾ってみると、さまざまなトラブルが続き、制作費が当初の3倍にふくれあがりと同時にその長さも大きく膨らみ編集が大変だったそうである。未公開の部分を足したものが、何度も上映されその度に全然ちがう印象を持たれたと聞きました。追加したお金はすべて監督が出したと聞き、それはそれで凄いなと正直思いました。 あと、メチャクチャ笑えたのがカーツ大佐を演じたマーロン・ブランドが撮影に待てど暮らせど表れず、来たと思ったら台詞をまったく覚えていなかったという話し。さすが大物は違う。確かにマーロン・ブランドの圧倒的存在感は、いるだけで充分といったオーラを放っていました。 みなさん映画史に残る作品、是非観てください。今日だけでは話しを語りきれないので、是非折を見てまた・・・。はじめにいいましたが、音楽と音響効果が凄く圧倒的シーンをより迫力あるものに仕上げています。エピソードの中にこの作品をオペラと称したひとがいるそうです。 制作に参加していたコッポラ夫人エレノアは、後日談で撮影半ばでコッポラ監督がまさにカーツ大佐になっていたと言っているのが制作の重さを語っています。 また、あるインタビューで監督自身「この作品のテーマ」はとの問いに、いったい何でしょうね?と答えているそうで、きっと苦労が多く行き先を見失っていたのかも???そして「芸術は爆発だ!!」の境地に達していたのかも知れません。 P.S. もうひとつだけ言わせてください。劇中、ある意味カーツ大佐より危ない指揮官キルゴア中佐(ロバート・デュバル)の台詞「朝のナパームの臭いは格別だ!」は、まさに当時のアメリカの狂気を象徴している恐ろしい言葉としてこころに刻まれました。 ※今日の画像は日本で創られた駅貼りポスター。日本を代表するデザイナー石岡瑛子氏によるもので、イラストは滝野晴夫氏。2連作の一枚は傑作で、のどから手がでるほど欲しかったことを思い出します。
by eddy-web
| 2018-05-30 00:00
| よもやまCINEMA(映画の話)
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