よもやまシネマ395 “ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男”
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2018.4.25

昨年度のアカデミー賞候補作品の中で、わたしの中ではもっとも感動した一作になりました。ゲイリー・オールドマンの主演男優賞は、完璧な演技で文句のつけようがない授賞です。これほど重厚感溢れる作品には、とんとご無沙汰。“ペンタゴン・ペーパーズ”も良かったですが、わたしは脚本や照明、音響効果、映像、そして演技とすべてにおいてこちらに軍配を上げたいと思います。作品賞こそ逃したが、個人的にはこちらの方が好きです。好きという判断基準なら“3ビルボード”も甲乙つけがたい作品です。「いずれにしても主演男優賞は意義なし!!」拍手です。凄すぎて称賛の言葉すら見つかりません。“レオン”で出会ってからず~っと見て来た個性派の俳優さんは、とうとうやってくれました。「良い仕事してますねェ~~!!」って誰かみたいに言っちゃいます。脇役でいつも存在感をみせてきた地道な苦労が、ようやく実を結んだそんな瞬間です。そう言えばかつて彼の事を「カメレオン・アクター」と呼んだひとがいるそうです。これこそ、最高の褒め言葉かも知れません。
さて、作品は実在のイギリス首相の生き様を、第二次世界大戦の戦時下ナチス・ドイツとの和睦か徹底抗戦かの決断に迫られた時の首相の苦悩をリアルかつ繊細に紡ぎ出す秀作。物語の冒頭、追いつめられた当時の首相チェンバレンが退任に追い込まれ後に白羽の矢がたったのが、この物語の主人公チャーチル。決して評判のいい人物とは言えないがその雄弁さは、だれもが認めそれゆえに敵視するものも多かった。当時その言動が高圧的で「政界一の嫌われ者」とさえ言われていたそうである。確かに作品の冒頭で、自分の思い通りにならないとやたら怒鳴りまくるシーンが映し出される。正直「こう言うタイプは大嫌い」と、自分の頭の中を過った。ところがあれよあれよとその人間味溢れるこのおじさんに、どんどんと引かれていく自分がいつの間にかいたのである。色々なひととの会話シーンがとても深く味わい深く描かれています。例えば妻クレメンティーンとの会話は、毅然とした妻の言葉にたじたじのチャーチルの少年のように無邪気で可愛いし・・・。かと思えば後半、国王ジョージ6世との腹を割った会話には男同士の信頼が生まれる瞬間を映し出す。そして、秘書のエリザベスが自分の立場をわきまえずに、いまイギリスはどんな状況なのかを問うた時の行動と彼女との会話。机の上に置かれた写真を観てそれが彼女の兄であり、ダンケルクで戦死したことを告げられ時のチャーチルの表情に涙が止まりませんでした。いま思い出しても涙が溢れてきます。あのときの慈愛に満ちた瞳の奥の輝きは、一生忘れる事のできないシーンとなりました。あげたら切りのないほどの名シーンの連続です。はじめて乗った地下鉄の中での民衆との会話や、ラストの議会での和睦か徹底抗戦についての決意表明演説は圧巻である。4分間にも及ぶその演説は、民衆の声に耳を澄ませ、葛藤と苦悩を抱えながら導き出した彼の言葉。国を奮い立たせた瞬間が鮮やかに甦り、いま観ているわたしたちの心さえ激しく揺さぶります。その作品を観た時、昨年観た“ダンケルク”がリンクしイギリス本土では戦場と同じくらい大きな闘いが起こっていたのだということを知りました。
余談ですが、もうひとつ思い浮かんだ映画があります。“日本のいちばん長い日”です。2015年版で、もう4年ほど前の作品ですが世界大戦末期の日本が降伏を迫られ決定をくだす数日間の出来事。この時の首相の鈴木貫太郎内閣総理大臣と、昭和天皇の姿がチャーチルと国王の覚悟と決断を思い出させ、国を背負うことの重さを痛感しました。
なんだか、いま日本でもめている事が失礼ながらチッポケ過ぎて哀しくなりました。アッ!!ちょっと言い過ぎました(失礼)。すみません国民に取っては、小さい話ではありませんでした。ある意味、日本は平和だという証なのかも知れません。あまり誇れませんが・・・。

P.S. 演技が全てと言える作品ですが、忘れてはならないのがメイクアップでアカデミー賞を授賞した辻一弘さんの話。話すと長くなるので手短に・・・。友人でもあるオールドマンから直接、オファーを受けてのスタッフ入り。この時点でその仕事からは離れ別の仕事をしていた彼に“君じゃなきゃ、ボクはこの仕事を受けない”と言わせた絆話。こちらも感動しました。称賛するのはメイクだけでなく効果音の巧みな使い方や、画面構成の中で黒をバックにしたトリミングなど総合的にみても重厚感のある傑作です。絶対のお勧め作品です。今日までの公開ですが、頑張って何処かでやっているところを探し観てください。お願いしちゃいます。ヨロシクです。
※チャーチルの演説は、のちにノーベル文学賞を受け、彼は伝説のリーダーになりました。彼の残した言葉の一遍「成功も失敗も終わりではない。肝心なのは続ける勇気だ。」


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by eddy-web | 2018-04-26 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
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