

2018.3.06
話題作“シェイプ・オブ・ウォーター”を鑑賞。今年度のアカデミー賞候補No.1の呼び声が高かった作品だが、見事に作品賞を受賞。つい昨日の発表に、いても立ってもいられず劇場へと足を運びました。
感想ですが、大人向けのお伽噺と言ってしまえばそうなのだが、かなり深い愛のテーマを描いています。でも見終わって感じたのは、こう言う作品がアカデミー作品賞を獲るようになったこと。あまり今までにはない事例ではないでしょうか?3年前に作品賞を受賞した“バードマン”も同じような要素を含んだ内容でしたが、それとはまた違う表現には複雑なメッセージが含まれ、なかなか整理がつかないわたし。監督したギレルモ・デル・トロの書き下ろしで創られた作品は、独自の世界観で溢れ、夢とも現実とも思える不思議な空間を想像させてくれます。監督はオタクとしても知られるひとで、日本のまんがなどにも精通し強い影響を受けていると聞きます。そんなひとが創った作品は、主人公のモンスター(半漁人)への拘りも凄く、リアルな作り込みにまず驚かされます。目の動きは特にリアルで、その表情はことばでは表現出来ない感情を見事に表しています。このモンスターを創るのに、今回アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞(ウィンストン・チャーチル)を受賞した辻一弘さんに目だけでも創ってほしいと頼んでいたという話が流れていました。本当ならすごい話。いずれにしてもそのリアルさは観ていただければ納得のはず。
さて、主人公のモンスターと心を通わせる女性イライザ(サリー・ホーキンス)は、生まれつき声を失っている障害を持った人物。その彼女は物語の中ではマイノリティを代表していて、友人のゼルダもまた黒人というだけで差別を受けている設定。間違いなく差別への警鐘を訴えたメッセージ性が読んで取れます。ましてやモンスターとなればマイノリティの代表。そんな二人の恋という異例な愛の形の表現が、アカデミー賞という栄誉に繋がったことは間違いないことでしょう。ラストの水中の抱擁シーンは、絵画のように綺麗で美しくこころに残るものとなりました。イライザは全然美人ではありませんが、見終わるととても愛おしく可愛い女にみえて来ます。内面から溢れ出す無償の愛が、彼女をそう見せるのでしょう。荒唐無稽な話ではありますが、こんな愛の表現もあるのかとデル・トロ監督の創造力には拍手を贈ります。
作品はSFともラブロマンスともモンスター作品とも言える要素を併せ持つ、監督のオタク度100%の作品に仕上がっています。アカデミー賞を受賞したほどの作品ですが、結構賛否は分かれるのではないでしょうか?個人的には好みですが、微妙なモヤモヤが残り、わたしの中の満足度が100%にならなかったのは事実。ラストも「へぇ~、そうなるか?」といった感じだし・・・。オタク好みの作品であることは間違いありません。映像表現がちょっと“アメリ”の色彩感に似ていたり、音楽の使い方が郷愁を誘うような古典の曲を使ったりと、独特の演出を施しています。ちょっと凝り過ぎていて、その演出が何を意味しているのかと考えてしまうほど・・・。“美女と野獣”は100%のお伽話でしたが、今作はまさにリアル版ともいえます。斬新な発想の物語は、単に好きとか嫌いとかだけでは評価できないところが、良くも悪くも考えさせられる厄介な作品。このモヤモヤ感は「エヴァンゲリオンの最終回」以来の出来事です。さて、みなさんはどのような感想を持たれるでしょうか?見終わった後に、あれやこれやと話が尽きない物語ではないでしょうか?
P.S. 劇中でイライザが手話で、「彼を助けないんだったら、私たちだって、人間じゃないわ」っていう言葉は胸に突き刺さります。