

2018.2.21
映画史に残る傑作と思う作品、”グダット・カフェ ”のディレクターズカット版を鑑賞。何度観ても素敵な作品である。どこをとってもわたし好みの大好き映画のひとつで、死ぬまでに一度は観て欲しい作品。
公開当時に観た印象は、今までに観たことのない独特な雰囲気を醸し出す不思議な世界観を感じたわたし。そして何より耳に残る主題歌の「コーリング・ユー」のジュペッタ・スティールの歌声。もの悲しくも艶やかなその声は、そっと物語を包み込み印象を高めています。映画音楽で有名な曲は多いが、この曲も間違いなく心に残る一曲になりました。
ドイツ映画だが、舞台はアメリカラスヴェガス近くの郊外の寂れたカフェ。この設定にアメリカには不似合いなドイツ人女となれば、もうすでにお伽噺の予感がする。見終わると、期待を裏切らない傑作でとても気持ちが癒やされる。映像も実に美しく、雄大なアメリカ大陸の風景にふれ一度は行ってみたくなるような気持ちにさえなる。乾いた空気感と艶のある歌声による、演出効果の見事さは圧巻。
物語はドイツからアメリカに観光でやってきた女ジャスミン(本当はヤスミン)が、見知らぬ土地にひとり投げ出され(夫婦喧嘩により)偶然見つけた一軒のカフェ。そこで暮らす人々との交流を通し「幸せとは・・・」を紡いでくれる。砂漠のど真ん中に放り出され、ハイウェイを大きなスーツケースを引きずりながら歩く太ったドイツ人女の姿はかなりインパクトがある。顔立ちもコテコテのドイツ人で失礼だが、メイクのせいもありちょっと怖い。額に汗してやっとたどり着いたハイウェイ沿いのカフェ兼モーテル(&ガソリンスタンド)、その名も“バグダットカフェ”。実にお洒落な名の店だが、客などほとんどこない。店の前で椅子に座り涙を流している女主人ブレンダの前に現れた、異邦人ジャスミン。この出会いから物語ははじまり、最後までグイグイと引き込まれて行く。冒頭ちょっと怖い顔と表現したジャスミンだが、ラスト近くになるとまるで女神のように思えてしまうくらい可愛いと感じてしまう。まさにマジック。映画の中でもマジックの場面が出てくるが、彼女自身がマジックである。絶対に観なくては損をする作品である。彼女が乾いた砂漠に舞い降りた天使で、カフェがそこに暮らす人々のオアシスになる瞬間を是非観てはいかがでしょうか?
ジャスミンを演じたマリアンネ・ゼーゲブレヒトの存在感は凄いのひとこと。ドイツでの活躍は知りませんが、この映画で彼女は間違いなく映画史に残る女優さんになりました。現在70歳を超えたようですが、もっと沢山映画で観てみたいひとりです。そして対するブレンダを演じたCCH・パウンダーの演技もマリアンネに負けない素晴らしいものでした。二人の掛け合いがこの物語を創るあげたと言っても過言ではありません。ラストは涙がジンワリとほほを濡らし、とても幸せな気持ちになります。
P.S. ジャスミンに淡い恋心を抱くカウボーイ風の老いた男を演じた、ジャック・パランス。名作“シェーン”の殺し屋役をした名優が輝いています。とてもピュアな男を演じ、こんな年寄りになれたら良いなと思ったわたし。すでに年寄りの域には入っていますが、まだ修行が足りません。頑張ってジャックを目指します。