

2018.2.05
モダン・ホラーの開拓者と称される、人気作家スティーブン・キングのライフワークとされる同名小説の映画化である。作品の名は
“ダーク・タワー”。つい最近“IT-イット”を観たばかりだが、この人の作品は本当にワクワクドキドキさせてくれ、まずはずれることがない。彼の才能は他の作家には感じられない、日常の中に潜む不思議な感覚を抽出する類いまれなるセンスにある。ホラー作品も他とは違う、非現実世界の中で描かれ気がつけば夢見心地の中・・・。また、ホラー作家とは思えない「ショーシャンクの空に」や「スタンド・バイ・ミー」のような感動作も執筆するまさに天才。彼の作品はほとんどと言っていいくらい映画化されヒットする。その中身がいいからに他ならないのだが、そう思うととそれらを映像化する側にはそうとうなプレッシャーがあるに違いない。わたしが観た作品群の中にも良いものばかりでなく?っと思う作品はあった。どうしてもスティーブン・キングの名が、期待を大きくしてしまうのはしょうがないことだろう。
さて、“ダーク・タワー”の感想です。原作は長編ですでに第7巻まで出版されているもので、世界幻想文学大賞を授賞した大作。その内容は彼のどの作品とも類似しない壮大かつスリリングな旅が描かれている。特にシリーズとしては描かれておらず、一話分冊形式で書かれているようである。個別に読んでも楽しめるということ。映画は全体の一部をピックアップし脚本が創られたようですが、やはりその世界感は流石と言わざるをえない。毎夜得体の知れない夢にうなされる少年の体験からはじまり、あっと言う間に物語の中に引きずり込まれてしまう。設定も実に奇想天外で宇宙と現実世界との間に存在する「中間世界」での善と悪の闘いが描かれている。その舞台が西部開拓時代を彷彿させる設定なのも意外な感じで、武器も拳銃というアナログな表現である。そこらへんが逆に新鮮なのも面白いところである。中間世界に立つダークタワー(世界の平和を保つ塔)を破棄しようと企む悪の権化「黒衣の男」とタワーを守る最期の守護者「孤高の拳銃使い」とその仲間の壮大な闘いが軸になっている。黒衣の男ウォルターは魔術を操り、対抗するローランド(ガンスリンガーと呼ばれる守護神)は、目にも留まらぬ拳銃さばきで弾丸を撃ち敵を倒す。荒唐無稽な世界なのだが、観ているうちにすっかりはまってしまうのは何故でしょう?よくこんな発想が生まれてくるなと、キングの才能にまたまた驚かされる。彼の創造力には限界など無いのかもしれません。ちょと聞きかじった話だが、彼は実生活で大事故に遭い生死の境を彷徨った経験があるらしい。そんな体験が彼のような、天才を生んだのかもしれない。
監督がスウェーデン版映画“ミレニアムドラゴン・タトゥーの女”を撮ったニコライ・アーセル。知らずに観て、なるほどと思わせてくれました。ガンスリンガーを演じたイドリス・エルバは“マイティー・ソー”のヘイムダル役でお馴染みの俳優さんですが、今回はメインでしっかりと存在感を出しカッコいいです。敵の黒衣の男ウォルターを演じたマシュー・マコノヒーに関しては言うことはありません。何をやっても絵になる男ではないでしょうか?鍵を握る不思議な力を持つ少年ジェイク役のトム・テイラーも二人に負けない演技で、次回作がとっても楽しみです。新たなキングの世界に、みなさんも一歩足を踏み入れてみませんか?きっと癖になると思います。
P.S. 中間世界に足を踏み入れたジェイクが観た屋敷の残骸。その壁に描かれた「ペニー・ワイズ」の文字には、ちょっとほくそ笑んでしまいました。まさにサプライズの演出で、思わず「キング万歳!!」とこころの中で叫んだ瞬間でした。