人気ブログランキング | 話題のタグを見る
よもやまシネマ374 “花筐”
よもやまシネマ374 “花筐”_e0120614_19310661.jpgよもやまシネマ374 “花筐”_e0120614_16460901.jpg




2018.1.16

いま、日本人監督の中で一番好きな監督と言えば大林宣彦さん。映画界には名匠、巨匠と呼ばれたひとは多い。作品の質や内容が高いからこそ、そこにひとは集まり高い支持を得、時代に名を残すひととなる。もちろんわたしも多くの素晴らしい作品に触れ感動をもらい、好きな作品(好きな監督)は多い。だが、ひととして好きな監督って言うのはこの人をおいていない。いつでも暖か~い気持ちにしてくれるこころの薬を、上手に調合して作品を創ってくれます。人柄が溢れていると言うか、こころに寄り添うような作品でいつも包み込んでくれる大好きな監督さん。その監督が創った作品は、発表と同時に監督がガンにかかり余命3ヶ月と宣告を受けているというショッキングな会見だった。監督がそんな状態の中で創り上げた作品には、どんなメッセージが紡がれているのだろう。
早速最新作“花筐”が公開されている、聖地有楽町に足を運びました。余談ですが映画を見始めロードショウを観に、何百回と足を運んだ街。この街も大きく様変わりし大きなビルが覆い被さるように聳え立っています。映画館の興行形態も変わり単館での公開が少ない現在だが、いまでも歴史をまもり続けているところが数は減ったがある。そのひとつがスバル座。今日はそのスバル座にやって来ました。何十年ぶりかも思い出せないが、昔のまま同じ場所に存在し何だかふるさとに帰ってきたような気分になりました。
さて、“花筐”。大林監督の世界が美しい風景(唐津)をバックに百花繚乱の勢いで冒頭から溢れ出す。その様式は舞台劇を映像にしたかのような演出で、原作の時代を丁寧に描き一場面ごとに深い拘りを感じさせる。監督が長く表現に使ってきた合成技術をふんだんに使い創り上げた、動く日本絵巻といった伝統さえ感じさせる。カットカット1枚に美への拘りが表れ、屏風絵が動いているような気持ちになる。また良き日本語のやさしい言葉のやりとりに、あらためて日本語の美しさを味わうことも・・・。そして絶妙なタイミングで挿入される音と音楽。笛、鼓、チェロ、ハーモニカなどが、主人公たちの感情と重なりより印象を深める。物語は今とは全然ちがう時代背景(大戦へと繋がる頃)の青春群像だが、時代は違えど青春期の悩めるこころを描き出し、いまを生きるわたしたちがいかに幸せかと再認識する。もがき苦しみ、時にあこがれをいだき揺れるこころが絵画のような映像に重ねられ、運命の残酷さに考えさせられる。時代の悲壮感を美しい映像で包み、どんな環境の中でも強く自身と向き合う若者たちの姿が儚くも美しい。原作は檀一雄さんの有名な作品だが、監督がデビュー作“HOUSE”撮る前に書き上げた脚本を、40年越しで映画化した青春群像劇とのこと。監督も生まれる前の時代に創られた檀一雄の短編だが、そこに込められた大林監督の思いとは・・・。
大林ワールドの血は脈々と流れているが、いままでのどの作品とも違う沢山のメッセージが込められていることを強く感じます。監督の作品では良く泣いた。と言うよりは泣かされたといった方が正しい。だが今回の作品は泣けなかった。胸に来る場面は幾度もあるのだが、何故か涙は出てこない。どうしてなのかはわたしにも解らない・・・。
監督が余命宣告を受けてから、1年半かけて創りあげた作品に込められた思いを、ぜひみなさんにもご覧いただきたい。そして監督にはまだまだ映画を通し、忘れがちな「ひとを思う(憶う/想う)優しさ」を描き続け、道標となり引っ張っていただきたいと、こころから願ってやみません。どうかよろしくお願いいたします。
P.S. 作品に参加した俳優のみなさんが、みな素晴らしい演技を見せてくれました、「ありがとう」の言葉を贈ります。
by eddy-web | 2018-01-16 00:00 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
<< よもやまシネマ375 “マジン... よもやまシネマ373 “キング... >>


S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30
最新の記事
NANJYa?COLLe62..
at 2023-06-05 00:00
よもやまシネマ617 “岸部..
at 2023-06-04 00:00
よもやまシネマ616 “ワイ..
at 2023-05-24 00:00
よもやまシネマ615 “アル..
at 2023-05-19 18:20
NANJYa?COLLe61..
at 2023-05-19 00:00
カテゴリ
以前の記事
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 06月
2007年 05月
フォロー中のブログ
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


logobr.gif