よもやまシネマ370 “午前十時の映画祭/戦場のメリークリスマス”
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2017.12.19

“午前十時の映画祭/戦場のメリークリスマス”を観てきました。この作品も再びスクリーンで観たかった映画。大島渚監督の作品をはじめて観たのは“儀式”。有楽町駅前にあった、日劇アートシアターという小劇場で観たのが思い出される。当時17歳だったわたしは、映画鑑賞にはまり連日映画館をはしごしていました。その頃から監督は有名で「松竹ヌーベルバーグの旗手」と呼ばれていた。フランスで一時代を築いたヌーベルバーグとの繋がりはないようだが、映画製作の新しい時代の波と言われていたと記憶しています。その旗手と言われたのには、独自の世界観で高い社会性をテーマに権力に対する姿勢を前面に描いたからに他ならない。ただその頃のわたしには、その深いメッセージを受け止める器などなく、暗くて小難しいだけの印象を受けていました。その後“愛のコリーダ”が世に出、日本初となるハードコアポルノの名が話題となり世の中をアッといわせたことを覚えています。常に挑戦的な映画創り代名詞と言ってもいい大島監督は、日本から海外へと製作の場を拡げ、ついには“愛の亡霊”でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞。その名を世界に知らしめたのが1978年のこと。それから5年後に満を持して発表されたのが、今回の“戦場のメリークリスマス”である。この作品はカンヌに出品され賞こそ逃したが、日本では数多くの賞を獲りその年、キネマ旬報ベスト・テン読者選出第1位に選ばれました。
あらためて観て、映画の中に描かれた人間愛の深さに気づかされ強い感動が全身を貫きました。作品が創られるまでに5年の歳月がかかったのには、資金やキャスティングなど多くの困難があったと後に語られました。しかしこの作品は間違いなく映画史に残る名作となったのは、観れば間違いないと誰もが言えるのではないでしょうか?少なくともわたしが観た大島作品の中では、最も記憶に残るものとなりました。
内容もさることながらキャスティングの斬新さがこの作品に、いままでにない血を流し込み強烈なインパクトを与えたのは間違いのない事実。ほぼ素人と言えるひとを役者に立て創られた作品は、その人たちの個性を限りなく引き出し見事に輝かせてみせた・・・。役者では出せない不思議なリアリティを見事に演出し多くのシーンが瞼に焼きました。主人公は出ているすべてのひとと言っていいこの作品。ひとりでもかければ完成されないような感情のハーモニィを感じます。捕虜の英国少佐セリアズを演じた世界的ロックスター・デビット・ボーイの凜とした演技、収容所所長ヨノイ大尉を演じた坂本龍一(YMO・テクノミュウジシャン)の危うい美しさと繊細な感情表現、そしてこの作品で間違いなく映画に目覚めたであろうビートタケシ(北野武監督)が演じたハラ軍曹の鬼気迫る儚い演技が絡み合い昭和史に残る名作を生み出しました。3人以外にも多くの素人(内田裕也・ジョニー大倉・三上寛など)を起用した作品は出ていたこれらのひとがすべてアイデンティティを持っているひとたちだった事は間違いのないこと。大島演出のここが、本当に凄いところだと観れば納得。(ミーハー的に言うと、デビッド・ボーイと坂本龍一の美しさ(色気)は半端ありません。それだけでも観る価値アリ。いまイケメンとか呼ばれるひともいるようですが、ふたりはそんなものを超越した存在です。)“愛のコリーダ“でも松田瑛子という無名の新人を使い日本初のハードコアを撮り、当時過激な性描写は映倫と裁判で争ったことは有名。常にリアリティに拘り、一歩も引かない独自のポリシーを表現で貫いた姿勢は、後年の2作まで引き継がれています。最後の作品になった“御法度”は、後年病と戦いながら魂を振り絞って完成させ、大島渚ここにありと世に知らしめた最後の作品となりました。もっともっと沢山の作品を見せてほしかったと“戦場のメリークリスマス”を観てあらためて素直に感じたわたし。この名作は、絶対に観てほしい作品のひとつです。
P.S. この作品で音楽を担当した坂本龍一。そのテーマ曲はその美しい旋律で作品をより一層印象付け、その年の英国アカデミー賞作曲賞を受賞。その後も多くの映画音楽に関わり“ラスト・エンペラー”では日本人初のアカデミー賞作曲賞を受けました。彼もまた、北野武と同様に大島監督との出会いで新しい世界への扉を開け才能を大きく花開かせたのではないでしょうか?印象に残るその儚い旋律は映画史に残る名曲となり、映画同様わたしたちのこころに強く残るものとなりました。
最後にハラ軍曹の名台詞「メリークリスマス、メリークリスマス、ミスター・ローレンス」を贈ります。このセリフは、名作“禁じられた遊び”の「ミッシェル!ミッシェル!!」と同じくらいこころに染みる言葉(台詞)。心の奥に大切に残したいと思います。

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by eddy-web | 2017-12-21 11:24 | よもやまCINEMA(映画の話) | Comments(0)
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