

2017.12.04
予告を観て気になっていた作品“光”を鑑賞しました。原作は直木賞作家(まほろ駅前多田便利軒)の三浦しをん。彼女の作品の中では異彩を放っているとされる今回の“光”。作品に感銘を受け映像化に挑んだのは、いま最も注目されている監督の大森立嗣氏。“ゲルマニウムの夜”で監督デビューし、日本はもとより海外でも高く評価されている気鋭の監督である。“さよなら渓谷”を観ていますが、人間のこころの奥底に宿る心理を見事に捕らえ、怖いくらい切ない作品でした。三浦作品は“まほろ駅”シリーズを合わせ3度目の映画化。監督はある意味彼女の作品ファンなのかも知れません。
さて感想です。久しぶりにメチャクチャ重たい作品を観せられ、こころが真っ暗になり考えさせられてしまいました。どうしても主人公たちのこころの闇を、紐解きたく「あ~でもない、こ~でもない」とそれぞれの気持ちを探ってみました。自分なりの答えらしきものは出たのですが、正直自信はありません。きっと観るひとにより、異なった意見になると思われます。ただ、誰の中にも存在するひとつの愛の表現なのかも知れません。凄く切ない愛ですが・・・。この手の作品は、観ないと解らないし観ても解らないが観ておく必要はあるようにわたしは感じます。もちろん覚悟して望んでもらわないといけませんが・・・。
映像がとても内容とは違い美しいカット割りで描かれ、写真集をめくる感覚で情景描写が写し出されています。それに反して音楽(音響)が、不愉快きわまりない音を響かせ嫌な気分を増幅します。(音楽を担当したのは、業界では有名なテクノミュージックの巨匠ジェフ・ミルズ氏。)この相反する効果は、主人公たちのこころの動きを紡ぎ出し重たくこころにのしかかってきます。映画とは娯楽という考えがありますが、この作品に関しては楽しむなどという言葉はみつかりません。でも考えさせられるという意味では、これもまた映画の持つ使命を果たした作品ではないでしょうか?原作を読んでないのでなんとも言えませんが、女性が書き上げた作品とは思えないほどエグイ表現でした。でもきっとこれが男とか女とかではない本当の人間の姿なのかも知れません。
主人公三人を演じた、信之役の井浦新、輔役の瑛太、美喜役の長谷川京子、そしてもうひとり重要な役信之の妻を演じた橋本マナミ。みなさんそれぞれに深みのある、怖い演技を見事演じぐいぐい迫ってくる危うさがたまりませんでした。もともと評価が高い男優人は初共演という事ですが、ある種共鳴しあっている感じで凄い緊張感がありました。また、女優さん二人はいままで観たことのない表情をみせこれも素晴らしいものでした。橋本さんはグラビアのイメージが強かったので、とても驚きでした。今後の活躍を多いに期待します。さて、みなさんはこの作品から何を感じ、どう主人公たちのこころを読み取るのでしょうか?聞かせてくれたら嬉しく思います。
P.S. 余談ですが大森監督の家系は、父親が舞踏家で俳優でもある麿赤兒氏。弟が俳優の大森南朋。義理の妹が女優の小野ゆり子さんと、血とはまさにこういうことを指すのでしょうか?