2017.10.27
SF映画の金字塔“ブレードランナー”が、35年の歳月を経てついに続編を公開した。思い入れの深い作品だけに、個人としては複雑な気持ちで鑑賞に望んだ。ラストシーンの儚くそして哀しく美しい映像が脳に残り、人間の犯す愚行に胸が締め付けられたことが蘇る。
数々の名作を世の送り出した名匠リドリー・スコットが、その名を世界に知らしめた作品は制作総指揮のもと、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督に引き継がれ制作された。SF映画の金字塔と呼ばれた作品の続編ともなれば期待しない訳にはいかない。引き継ぐスタッフももの凄い重圧だったのではないでしょうか?
さて、前作の時代設定2019年から30年の時を超えた未来。謎を秘めたままラストを迎えた前作を、さらに紐解くかたちでわたしたちをあの独特な世界へと誘う。何とも言えないあの湿った空気感は継続され、あっという間に時空を飛び越え前の未来へとつれて行かれる。何もかもがスタイリッシュで美しい。そして冷たく乾いたその世界に見えてくるもの、それがはっきり見えたときわたしたちは何を未来に託すのでしょうか?
工業デザイナー、シド・ミードのデザインした未来の車が空中を飛ぶシーンが目に飛び込んできた瞬間体中に電気が走るのを感じました。工業デザインの世界ではというより、デザインの世界では知らない人はまずいない人物の車はこの作品には絶対の必須アイテム。いつ見てもカッコいい。相変わらずの高いレベルの美術や視覚効果、音楽、そして衣装デザインと文句のつけようが無い。ひとつひとつのシンボライズされたシーンは、もう芸術と言っていい品格が漂う。これだけでも充分に楽しめる上、それを背景に描かれる物語は前作ともまた違うSFの可能性をこころに刻んでくれました。前作との比較がきっとされることと思います。でも、観て気付くのは間違いなく前作をリスペクトした作品に仕上がっていること。これは凄いことだと思います。わたしは前作の作品のディレクターズカット版の特別販売DVDを持っているのですが(自慢ではありません)、今作品を見た後すぐに見直し鑑賞しました。間違いなく敬意を持って創られたことが、はっきりと確認できます。どっちが良いとかではなく、本当のファンはそんなことよりこの世界観に酔いしれているのでは無いでしょうか?少なくてもわたしは、どっぷり浸かって気分はMAX。もちろん劇場でも3D-MAXでご覧ください。宣伝ではありませんが・・・。
30年を経て新たに改良が重ねられたレプリカント(人造人間)たちの、儚く哀しい運命は前作同様胸打たれます。感情を持ちながら感情を表に出せない者の悲哀は、しみじみと伝わり人間の犯すであろう過ちを予言しています。現実味を帯びた物語は、更に命の尊厳と新たな可能性を残し終演を迎えます。
いま、2017年ですが、前作の時代まで2年。現実になるにはまだ先のようですが、こんな過ちだけは犯したくないものです。
P.S. デッカード(ハリソン・フォード)の登場は素直に嬉しい。そのまま30年後を演じられるのは、どんな気持ちなのだろうか?“スターウォーズ”のハン・ソロ同様、ファンには彼で無ければならない役。嬉しかったです。今作の主人公Kを演じた、ライアン・ゴズリング良いですね~~っ!ますます好きになりました。女優陣のアナ・デ・アルマス(ジョイ)、そしてシルヴィア・フークス(ラブ)も全然タイプは違いますが、とても魅力溢れる演技で印象に残りました。