

2017.10.18
予告を観て、好奇心がくすぐられた作品“スイス・アーミー・マン”を観に銀座へ。予想を遙かに超えた奇想天外な物語に不思議な感覚を味わった。今までに見たことの無い世界観は、説明が不可能で感想さえ思いつかない。そもそも“スイス・アーミー・マン”ってタイトルすら怪しいではないか・・・。全然意味が解らない。ひとは解らないものに引かれる、そしてそれを確かめる。そんな映画鑑賞があっても良いでは無いでしょうか?
この作品、世界で数々の賞に輝き話題になったようである。ファンタスティック映画祭で観客賞になったのもそのひとつ。観客から評価されたというのは、評論家からの評価よりむしろ作り手にすれば嬉しいに違いない。メガホンをとったのは、今作品が初監督となるダニエルズ(ダニエル・シャイナート、ダニエル・クワン)というユニット。ミュージック・ビデオのディレクターを経ての監督第一作。
観てまず想ったのがこの発想力はいったいどっから生まれたのだろう、とまず驚かされる。常人には思いもつかない発想は、それこそファンタスティック。大人の夢物語とでも言うのか、とにかく今まで触れたことのない感覚がず~っと残る作品である。
登場人物はほぼ3人。ひとりは遭難した青年ハンク、そして流れ着いた死体メニー。もうひとりは青年が思いを寄せる女性サラ。ハンクをポール・ダノ(プリズナ―ズ)、サラをメアリー・エリザベス・ウィンステッド(10クローバーフィールド・レーン)が演じている。そして主役の死体メニー役をなんとダニエル・ラドクリフ(ハリー・ポッター)が・・・。死体役が主役ということ自体がもう訳が解りません。でも、見終わると何か爽やかな風がこころに凪がれる。これは見てもらわないと説明出来ません。ひとによって受け止め方は違うと想いますが、わたしの胸には間違いなく届いた一球です。細かい話はするのを止めましょう。この夢は自分で確かめないとつまらないと想うので・・・。それにしてもラドクリフの演技が凄すぎて吃驚。あのポッターがまさか???と想うはず。ラドクリフはポッター以降、イメージを壊すため挑戦的な役を好んで演じていることは知っていました。凄いことだと思うのと同時に、役者としての覚悟みたいなものを感じます。今回この作品を観てそのアイデンティティを確信しました。そしてますます好きになりました。
不思議な出会いから始まるサバイバル・アドベンチャーは、奇妙奇天烈で笑いを誘う。また2人の会話はきわどいセリフのオンパレード(ちょっと前ならピーと音が入る)、そしてリアルな身体の動きは映倫のチェック間違いなし。でも何故かこれはいやらしさを感じさせない。乗りのいい音楽が合いまって、知らず知らずその不思議な世界へと足を踏み入れてしまう。気がつけば2人の関係の深さに涙してしまう。映像もとても綺麗で、センスのいい演出が盛りだくさん。これが1作目なら次はどんな作品をみせてくれるのだろう?いまから待ち遠しい自分である。
P.S. “スイス・アーミー・◯◯◯”っていう万能グッツに気がついたのは、映画を見終わってから・・・。なるほど・・・、そいいう意味だったのですね。ラスト泣かせてくれます。