2017.10.10
“アウトレイジ最終章”を鑑賞。平日にも関わらず、観客の数が多い。北野監督の人気を伺わせる瞬間である。さて、このシリーズも最終章。バイオレンス満載の映画は、R15指定のかなりエグイ表現でわたしたちを色んな意味楽しませてくれた。やくざの世界をとことん追求し全編に汚い言葉が乱舞する。そして拘りにとんだ殺しのシーンをこれまた際どい演出で表現してみせるのが北野流。最終章を迎え、どんな北野ワールドで締めくくってくれるのだろう?何を隠そう実は、この手のバイオレンスよりヒューマン(菊次郎の夏)を扱った北野作品が好きなわたし。同じ人間の中からこんなにも違ったものが生まれるのかと、いまだにその感性に振り回される。創造力豊かな優しい絵画を描くかと思いきや、想いっきり悪ふざけをし世間を騒がせる。天真爛漫な悪ガキがそのまま大人になったような人。ある意味とても羨ましい才能の持ち主である。
率直な感想を言いますが、「全員悪人」のキャッチコピーそのままの下克上を題材にした、新しいヤクザ映画第一作から7年。今回の作品はシリーズ中一番ソフト?いままでが凄すぎたのか温和しめで、殺しのシーンひとつとってもやや凄みにかける。アウトレイジ一作目、椎名桔平の殺され方はあまりにエグくインパクトの強さが際立ち忘れられない。今回ピエール瀧や大杉漣を殺害するところなどセンスの良さは感じるが、むしろ笑いを誘うような演出になっている。これは狙ったものなのだろうか?ラストも至ってスマートであっけない。構成や映像が美的表現に偏り、ハチャメチャな最後を期待していたわたしはやや拍子抜け・・・。北野監督の毒を食らいたかったのですが、優等生的な終わり方にすこし欲求不満が残ってしまいました。あくまでも個人的意見です。次回作では、どんなスタイルでもかまわないので、ぜひ予想不可能な北野ワールドを見せていただきたい!世界の北野は、こんなもんではありません。
P.S. 出演している俳優さんたちはみな凄みをきかせ、どっから観てもホンマモン(悪党面)。でも、「バカヤロー!!」ばかりでは・・・。逆に金田時男さん演じる国際的フィクサーの親玉・張(チャン)の物静かな立ち居振る舞いに、大物の風格と凄みを感じました。西野(花菱会若頭)を演じた西田敏行さん、この前観た“ナミヤ雑貨店の奇蹟”はいったい何だったのでしょうか?尊敬致します。北野監督は俳優さんたちにいちいち注文をつけずいきなり本番に入るらしく、俳優さんたちはその演出について行くのがメチャ大変らしいです。監督の意図がきっとそこにあるのだろうと思います。それに応える俳優さんたちは流石です。