2017.9.19
“午前十時の映画祭/トリフォーの思春期”を鑑賞。ヌーヴェルヴァーグを代表する監督のひとりトリフォー。52歳という若さでこの世を去ったが、今もなおその多くの作品は評価が高い。前回“突然炎のごとく”を鑑賞し、監督の映像表現に対する並々ならぬ情熱や独自の拘りを感じる事が出来たわたし。生涯30本の映画を撮ったら引退をと生前語っていたそうだが、残念ながら生涯で製作した作品は25本にとどまった。今回観た“トリフォーの思春期”ははじめてで、トリフォーのとタイトルにつけるくらいだからかなりの自信作ではないでしょうか?1976年の作品ですが、全体では後期のもの。きっと一番撮りたかった作品だったのでは・・・と観賞後ふと思った。作品は特に主人公を据えず、出ている子どもたちとその周辺にいる大人たちの日常をドキュメンタリー風に描いている。冒頭のタイトルロールで映る、子どもたちの70年代ファッションがじつに懐かしくいきなりタイムスリップ。ごくごく見かける日常生活の断片を、丁寧にそして愛情深く見つめ紡いでみせてくれました。国は違えど一度は通る思春期の不安やお焦がれ、そして勇気や冒険など、子どもたちを通し思い出させてくれる。それは監督がとらえた子どもたちの中にある、未来への大いなる輝きが溢れだし温かい。素人(オーディション)であろう出演の子どもたちは素直に役を演じ、まるでそばにいる気さえしてくる。ゆったりとした時間の流れが妙に心地いい。子どもの頃は時間がとてもゆっくりと動いていたことを思い出させてくれる。そして大人に対するあ焦がれはどんどんと膨らみ、押さえきれない感情にワクワクドキドキの毎日が続いていたことも・・・。忘れていた感情が沸き上がり、子どもたちの言葉や行動が自身と重なり合う。ラストのキスシーンのなんとピュアなこと・・・。観ているこちらが、思わず赤面しそうである。こんな時代に戻れたら・・・と思う大人はきっと沢山いるでしょう?奇麗ごとだけで表現していない、ありのままの生活はすんなりとこころに入ってくる。愛に溢れた作品はきっと監督そのものではないでしょうか?
物語の後半に発覚する転校生ジュリアンの虐待事件。そのことについてクラスの子どもたちを集めて語りかけるリシェ先生の言葉は、とても感動的でした。
「人生は生易しいものではない、強く心を持ちなさい。」と。
P.S. リシェ先生のことばに感動した自分ですがもうひとつ、
「先生はこどもの頃、学校が大っ嫌いだった。だから好きになるために先生になった。」と言ったこのセリフが忘れられません。いい先生です。見習いたいと思うわたしです。