

2017.9.05
オランダ出身の映画監督ポール・バーホーベン(79歳)の、最新話題作 “ELLE”を鑑賞。バーホーベン監督と言えば、良くも悪くも常に話題作を提供するひと。わたしはわりと好きな監督だが、やはり印象に残る作品となれば“氷の微笑”。かなり際どい描写が当時話題になり、主演のシャロン・ストーンはこれを機にスターダムを一気に上り詰めた。評論家の間では常に賛否が大きく分れ、話題には事欠かない監督だが、常に新しい挑戦をしていると何かのインタビューで読んだ記憶がある。という事は、どんな意見をも真っ向から受け止め前に進むという信念の持ち主のようだ。過激な性描写などが話題となった“ショーガール(1995年)”では、ゴールデンラズベリー賞(最も最悪な映画賞)10部門にノミネートされ内6部門を獲得。授賞式にも出席し、「ショーガール」の後ならもう怖いものはないと公言しこれまた話題に・・・。不名誉な賞にも関わらずどうどうと授賞式に顔を出す、ある意味すごいパワーの持ち主である。
前置きが長くなりましたが、“ELLE”はバーホーベン監督の本領発揮といった逸品で、わたしの中ではいままで観たどの作品(ロボ・コップ、トータル・リコール、氷の微笑、インビジブルなど)より一番。監督の総て作品を観た訳ではないので、偉そうなコメントは出来ませんが・・・。昨年度のアカデミー賞にノミネートされたのは、それだけ高く評価されたという証ではないでしょうか。
監督以外の近年観たいろいろな作品と比べても、強く印象に残る映画となりました。スリラーというジャンルにくくられていますが、そんな単純なものではありません。主人公ミシェルを演じたイザベル・ユペールの強烈な演技力もありますが、おんなの底力というか恐ろしさが満開です。こんな人物はそうそうお目にかかれませんが、総ての女性たちの中に潜んでいるものならと背筋が寒くなりまします。幼年期の体験などで裏付けられたような性格にも思えますが、見終わるとただそれだけではない主人公のもって生まれた強さを感じさせます。冒頭いきなりはじまるレイプシーンは強烈だが、その後の彼女の行動があまりにも冷静で「嘘だろう!?」と思わせる。ここから本当の彼女(女)の、強さと怖さが爆発してゆく。エロイところもエグイ描写も数あるが、この辺りはバーホーベン流演出と納得。それにしても最後の最後まで、どうなるのか息を呑んでみてしまった作品は、イザベル・ユペールのひたすら凄い演技に圧倒されぱなし。ただ強い女ではなく、自然に自由にその場を自分の思い通りにしたたかに生きるそんな生き様に、ちょっと引かれるのは何故だろう・・・。女性の概念をかえる作品と言ってもいいほどのインパクトが詰まった映画である。怖いと思って観てるうちに彼女の魅力に吸込まれている自分がいる。まるで魔力にかかったかのようだ・・・。不思議な作品である、なんとも説明しがたい高揚感が残ってしまうのは私だけでしょうか?
最後にひとこと。出て来る登場人物はみな危うい個性の強い男女ばかり。だがはっきり言って男はみなこどもで、おんなはみな主人公以外もおとな。見終わるとこのことに気づかされる。ちょっと悔しいがこの作品の中では、まったくいいところのない男たちである。
P.S. イザベル・ユペールは御歳64歳。何と言う色気だろう、そして風格。まさに最強(狂)の女登場である。(原題:Elle,フランス語で「彼女」を意味する)観て損のないお薦め作品です。