

2017.7.28
「午前十時の映画祭」またまた来てしまいました。もう止められません。今日は、“セント
・オブ・ウーマン(夢の香り)1992年のアメリカ作品。大好きなアル・パチーノがやっと手にした、アカデミー賞主演男優賞に輝く作品です。アル・パチーノと言えば“ゴッド・ファーザー”に代表されるアクター。幾度もアカデミー賞候補に上がりながら、一度もその栄誉に輝いたことがない無冠の名優である。運がないと言えばそれまでだが、実はこの作品で彼はスレード中佐役をはじめ断っていたそうである。エージェントが熱心に説得し、やっと腰を上げたそうである。運命とは皮肉なものだ。ただこの役に決まってからの彼の取り組みは半端なく、盲目の人物を演じるため盲学校に通い目の焦点を当てないことに気づき、芝居以外の時もズ~ッと徹底し過ごしたそうです。偏屈な盲目の元軍人を大声を張り上げ威圧的に演じ、そのセリフの多さをものともしない演技力。やはり凄い俳優さんです。この作品を観たら一目瞭然ですが、まさに彼の一人舞台・・・。凄すぎる存在感がぐいぐいと迫ってきます。だが負けてはいなかったのが、相手役の苦学生チャーリーを演じたクリス・オドネル。繊細な青年を初々しく見事に演じ、圧倒するパチーノの演技力に見事アンサンブルを奏でています。ほぼ二人の世界と言っていい作品ですが、脇を固める役者さんたちがこれまた良い具合に味わいを醸し出していて本当に素晴らしい作品です。例えばフェラーリのベテラン販売員やリムジンの運転手、最後に彼のスピーチを賞賛した女性教授などなど、ほんの少しの出番をしっかり演じまさにプロとはこう言うことだと感じました。結果的にパチーノの凄さは賞獲得という形で見事に評価された訳ですが、周りの登場人物が彼の凄さを引き出す演出になっていたのは間違いない。アルバイトで偶然出会った二人が、数日間で溶け合うこころ繋がりにきっとみなさんも暖かい気持ちになれるはず。
この「午前十時の映画祭」という企画、本当に最高です。お陰様でわたしの映画リストが本当に豊かになり嬉しい限りです。
最後に一言だけ言っておきたいことが・・・。この作品の名場面として有名なパチーノとドナ役のガブリエル・アンウォーのタンゴを踊るシーン。本当に印象に残る名シーンだと確認しました。ここだけでどれだけこころが豊かになれるか計り知れません。そして彼女の清潔な美しさが、こころに焼き付いてしまいます。彼女あまりこのほかの作品では見かけませんが、これ一本でも充分すぎるインパクトです。今までに同じ感じを体験したのは、“ブラザー・サン・シスター・ムーン”のジュディ・ボウカーと“おもいでの夏”のジェニファー・オニールくらい・・・。三人目の女神かも?彼女も少しの出演シーンでしたが、心に残る印象を残しています。
※チャーリーを演じたクリス・オドネルはバットマンでロビンを演じたのですが、これが大失敗に終わり、鳴かず飛ばずになってしまったようです。確かにバットマンシリーズの中では最悪の作品ですが、彼の責任ではないことを言っておきます。せめてティム・バートンかクリストファー・ノーラン監督が使ってくれていたら、もっと違うロビンもあったかも知れません。この作品を観て、もったいないとマジ思いました。余計なお世話ですが・・・。あと残念なのは、チャーリーの同級生役で出ていた若き日のフィリップ・シーモア・ホフマンである。個性的な顔立ちはこの当時から際立ち、その後“カポーティ”でアカデミー賞主演男優賞を獲ったひと。2014年に46歳という若さで亡くなり、その死には謎も多く薬物によるものと発表されています。監督としても評価され、これからという時の死は残念でなりません。“ハンガー・ゲーム”の時のプルターク役は、いまも強く印象に残っています。合掌。