2017.6.14
しばらく映画鑑賞の時間が空くと、何故かこころが乾いてしまう。そんな訳で乾きを癒やすべく2日続けての劇場通い。今日観た作品は、今年度89回アカデミー賞に6部門ノミネートされた“マンチェスター・バイ・ザ・シー”。主演のケイシー・アフレックが重厚な演技で、見事並み居る強豪を押しのけ主演男優賞を獲得した話題作。作品は脚本賞も受賞しており、見終わると後からジンワリと深い悲しみがこみ上げてくる繊細な作品に仕上がっている。今作も文芸作という感じのヒューマンストーリーで、やや重たいがわたしには間違いなく佳作となった。
物語はマンチェスターを舞台にした、ひとりの男の人生に迫る。ひとり故郷を離れ、ボストンで暮らす無口で無愛想な男リー。便利屋として働く彼は、頼まれれば何でもこなす。仕事は出来るが、性格が災いしトラブルも多い。歯に衣着せぬ性格で思った顔とをすぐ言葉にしてしまう。喧嘩ぱやくすぐに切れる。わたしが一番苦手なタイプの人間です。冒頭はこの彼の紹介的なシーンが続き重い。そんな彼にかかる突然の電話。最愛の理解者である、兄の訃報が飛び込む。といつもは内容には絶対触れない主義のわたしですが、とても感動し話したい菌がうずうずしています。先に言いますが良い作品です。大好きな作品のひとつにあげられる一品となりました。これ以上は離しませんが、ケイシ-・アフレックが素晴らしいです。性格は最後まで変わりませんが、愛に飢え、そしてだれよりも深く愛を持っている彼がとても好きになりました。作品は家族愛が中心に描かれています。ひとつの過ちが大きな波紋となり、ひとびとのこころと生活を壊して時間だけが虚しく過ぎて行く。ハッピーエンドとは言えないラストですが、逆にこころに染み込む。どんなに悲しい出来事に出会っても、ひとはそのことから逃げられない。ただひたすら前を向き歩いて行かなければ行けないことを、教えられます。「つらいことは早く忘れ、前を向いて生きて行こう!」なんて簡単に言葉に出来ないことを思い知らされました。人生はいろいろありますが、何故か覚えていることは楽しい思い出より悲しい思い出のが遙かに多い。わたしが根暗だからかも知れませんが、わたしは悲しみもある意味財産だと思っています。全部ひっくるめて、そこに自分があると思って生きています。いままでも、そしてこれからも・・・。無理に悲しみから逃げず、堂々と思いを語れるそんな人間でいようと思います。
また、力が入ってしまいました。良い映画に出会うと、熱くなってしまうわたし。主人公のリーとすごく似ているかも知れません。彼ほど寡黙ではありませんが・・・?
甥のパトリック役を演じたルーカス・ヘッジスが、とても清々しくて印象的です。今風の典型的若者は身勝手で都合が良い、でも実は繊細で傷つきやすい。そんな内面をを見事演じ、時折ユーモアさえ醸し出す演技は幅のひろさを感じます。これからが楽しみな逸材では・・・。
あと、音楽の使い方が絶妙でこころの動きと見事重なっています。そして、美しいマンチェスターの風景が儚いくらい奇麗です。(余談/むかし行ったことのある、カナダのビクトリアにちょっと雰囲気が似ていて懐かしい感じがしました)
監督・脚本を手がけたケネス・ローガン。まだ、そう多くの作品を世に送ってはいないが要注目です。日本では未公開の作品が多くありようで、ぜひこれを機に見せてほしいものです。
久しぶりにお勧めの一本です。わたしのように過去を引きずっているひとは、変な話「自分だけが・・・」から少し解放される作品だと感じます。そして明日からまた、「頑張って生きよう!」と思えるはず・・・。