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よもやまシネマ317 “メッセージ”
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2017.5.22

今年度のアカデミー賞に、8部門ノミネートされたSF作品“メッセージ”を鑑賞。先週観た“スピリット”で、映画で表現される深層心理の世界に深く浸ったばかりのわたし。だがその展開に戸惑ったわたしは、本当の意味を知るために何度も何度も反芻し自分なりの答え(メッセージ)を見つける旅をした。そしてやっとここに感想を書き上げることができました。
今作はSF作品というジャンルの中でも複雑なレトリックが描かれ、ともすると観客を置いてけぼりにしてしまう。わたしもはじめやや困惑し、描いていたイメージを完全に消去し物語に浸ることになった。突然世界中に現れた不思議な飛行物体。今までに見たことのない巨大な飛行物体は、静かに宙に浮きじっとしている。ここまでは良くあるパターンの導入部なのだが・・・。まずこの巨大な飛行物体の形に目を奪われる。シンプルで美しいのである。沢山あるSF映画の中で描かれた宇宙船のには、まず見当たらないフォルム。類似するものをあえてあげると「柿の種」である。そうビールの友のそれである。これ以外でもプロダクトデザインの素晴らしさに、まず驚かされた自分。それゆえこれからいったい何が始まるのだろうと、こころが揺らぎ画面に食らいついた。ところがそこに登場した女性ルイーズ(主人公の言語学者)の回想シーンが突然絡み、「えっ、ちょっと待ってよ!」という思わぬ展開へとことが進む。ここからが本番なのだが、普通の人はまず混乱するであろうまさかの展開です。間違いなくなぞの飛行物体は遠い宇宙からの来訪者で、何らかの目的で地球に訪れたのは察しできる。侵略なのか破壊なのか、それとも友好かという結論が常識の展開である。作品が進むにつれそんな単純な話でないことに気づかされる。もちろんSFとは単純なものではありませんが、いままでに体感したことのない世界へと引きずり込まれます。もやもやとした感覚がズ~ッと続き、終わってからも答え探しに必死になる。いろんな意味でとても考えさせられる。うまく言葉では表現出来ませんが、“生きること、生きていること”の意味を考えさせられました。
主人公ルイーズを演じたエイミー・アダムスが、この難しい役を見事演じわたしたちに一体感を持たせてくれます。無冠ですが何度もアカデミー賞に名をあげる実力派女優の演技は見事です。そして言語学という世界には縁遠いわたしですが、この作品で描かれるコンタクトの方法には興味をひかれ見事はまってしまいます。どこか東洋的でシュールな表現(デザイン)は飛行物体同様こころに残ることでしょう。宇宙船の中へ入るシーンやエイリアンとの接触など、想像力を掻き立てられる演出はその場にいるかのような気持ちにさえなります。エイリアンの真の目的とは・・・?ということですが、びっくりするような結末で終わります。これを予測出来る人はまずいないでしょう。いままでに出会ったことのないSF作品です。好きなSF映画と言えば“2001年宇宙の旅”“未知との遭遇”などがこの作品に近いかも知れません。ただ大きな違いは、宇宙という世界に存在する人間を描いているのではなく、人間の中にある宇宙を描いたところがこの映画の凄さではないでしょうか。監督であるドゥニ・ヴィルヌーブはいま最も注目を集めているひとで、次回作はあの“ブレード・ランナー”。そして“デューン/砂の惑星”と続いているそうです。“ブレード・ランナー”はファンの多いSFの金字塔。何十年ぶりの作品には期待が膨らみます。
難解な作品ですが、いままでに感じたことのない感覚があり、SF作品の中ではわたしの中で上位に残りました。
今作でルイーズをサポートする物理学者イアンを演じたジェレミー・レナーの地味な存在感も秀逸です。彼しか似合わないそんな役です。そのほかフォレスト・ウィテカーなどが脇を固め、科学や言語学、物理学といった凡人には縁のない世界の中、ヒューマンドラマを繊細に紡いでくれました。
※ルイーズの娘の名はハンナ。英文で「HANNAH」と記すがこのスペルの意味が解るとき、自分の中にひとつの宇宙が生まれました。原作「あなたの人生の物語」をこれほど読みたくなった映画ははじめてです。
by eddy-web | 2017-05-26 00:00 | Comments(0)
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