2017.3.31
多くの強敵を打ち負かし、今年度アカデミー作品賞を手に入れた話題作“ムーンライト”を鑑賞。正直いい、「ヘ~えっっ」って感じがしました。良い意味裏切られた感じですが、凄く意味のある授賞ではないでしょうか?こんな言い方をすると誤解を生みますが、なんかアメリカ映画っぽくありません。重たい感じでもなく、さらっと描いているのだがじわ〜っとこころに沁みて来る・・・そんな作品でした。映像が特に美しく、タイトルの意味を凄く意識して創られている事が感じられます。物語の中で主人公の少年に昔話を語る売人(違法薬物)が、月の光を浴びた黒人少年のことを話すのですが、ここにこの物語のテーマがあるのだと見終わったあとに感じます。手を振り上げさまざまな差別問題を訴えるのではなく、内面からえぐり出すようなそんな手法にすっかり浸ってしまいました。人とひと、親と子など切っても切れない繋がりの深さ、そして大切さを優しく包み込んで見せてくれました。アメリカの良心と言ったら失礼ですが、もがくやさしさが滲み出ていて素晴らしい作品でした。どことなく欧州作品のような、映像感覚がとても印象的で美しかったです。カット割など一枚一枚の映像が丁寧に繋がれ、人生のアルバムを見せられているような穏やかな気持になります。昨年末観た“Smoke”の余韻に近いものを感じたわたしです。いずれにしろ作品賞を争った“LA LA LAND"を押さえての授賞は見事。そこが一番の驚きで、冒頭失礼な発言をしてしまいました。“LA LA LAND"も凄く良い作品ですが、比べるのはやや無理があると思います。審査員はさぞ大変だった事でしょう。カンヌやベルリンなら、間違いなく“ムーンライト”かも???生意気いいすみません。主人公を演じた3人の俳優さん、よくこれだけ目の美しい、しかも似ている人を見つけたな~っと関心しています。それもみな素晴らしい演技で、眼力がとても印象に残りました。画像トーンがタイトルの“ムーンライト”を意識したブルーの色調で、静寂な中からじわじわと押し寄せる波のような感情を表現しています。芸術性もかなり高い作品ではないでしょうか?最後にオール黒人キャストで描かれた、この作品の本当の凄さは、人種の壁を越えて伝えたこころの叫び。拍手を贈ります。2作目にして作品賞だけでなく脚本賞も授賞したバリー・ジェンキンス監督にも、大拍手です。プロデューサーとしてプラピが関わっていることも、ちょっぴり嬉しい話です。みなさん劇場に足を運びましょう。
P.S. 入手したパンフ(ポスター)のデザインとても奇麗です。内容を映し出す表現は秀逸。ここにも作品への思いが溢れております。忘れていましたが、音楽(曲)の選定と使い方もはまっていて、術中にはまった感じだったことを付け加えておきます。