

2017.1.23
昨年、今年公開の話題作の紹介で一番観てみたいと思っていた作品が“沈黙”。それには3つの理由が・・・。1つ目は、原作が遠藤周作氏の日本文学ということ。2つ目は監督がマーティン・スコセッシということ。3つ目が主演にアンドリュー・ガーフィールドを起用したというところ。みなひとだが、大好きな人ばかり。今回の原作は読んではいませんが、狐狸庵の名で出していたエッセイ集に一時はまっていました。ユーモアに富んだその文章は、大人の中に残るやんちゃな少年のこころを奔放に綴っていました。純文学とは正反対の筆遣いにすごいひとだと、当時思っていました。キリスト教を題材にした作品が多く、今回作品もそのひとつ。そしてマーティン・スコセッシ監督といえばアカデミー賞の常連で、その独自の映画理念は高く評価されている巨匠である。候補には挙がるがなかなか手が届かず無冠の帝王とも呼ばれていたが、“ディパーテッド”でやっと栄冠を手にしその名を不動のものにしました。その監督が、原作と出会い28年の歳月を掛け生まれたという作品となれば観ないわけにはいかないでしょう。そして主演のガーフィールドですが、現在33歳となりしっかりとキャリアを重ねた俳優さん。その名を知らしめたのは“スパイダーマン”の2代目ですが、わたしはなんと言っても“わたしを離さないで”のトミー役の演技が印象に残っています。主人公が抱えた不安と絶望感を、息が詰まるような繊細な演技で見せてくれたことにつきます。本当に凄かったです。わたしお勧めの一本です。そう言えばこの作品もカズオ・イシグロという、海外で執筆活動をする日本人の作家さんのSF小説でした。いろんな意味で日本と繋がっている、そんな作品が“沈黙”です。
さて、感想ですがこれだけのスタッフとキャストで創られた作品ですので、もの凄い拘りが重たいくらいに伝わってきます。そう重たいくらい・・・。2度も繰り返し言ってしまいましたが、ある意味歴史映画とでも言うような色が強い作品です。それも華やかな歴史ではなく、閉鎖感の強い時代の日本の隠れた歴史(闇)にスポットをあてたもの。時代背景は「島原の乱」収束して間もない江戸時代。先に日本に渡ってキリスト教の布教という使命を受けた師の棄教したと言う噂。確かめるべく日本に渡った宣教師の弾圧に苦しむひとたちの姿を通し、自らも味わうことになる無力さの苦悩と挫折を描いています。アメリカではR指定になるほどの過激なシーンも多く、息苦しいほどに観る側に真実とはと迫ってきます。アメリカも日本の俳優さんたちも、鬼気迫る演技で最後まで物語りに飲み込まれてしまいます。いい作品とか、悪い作品とか言えるような作品ではないもので、観ておかなければいけない作品ではないでしょうか?
宗教に強い関心はなく、個人的には否定も肯定もないわたし。ガーフィールド演じるロドリゴ神父の「なぜ神は我々にこんなにも苦しい試練を与えながら、黙ったままなのですか?」という言葉は胸に突き刺さり考えさせられます。
※わたしの好きな作品ベスト3に入る“ブラーザー・サン・シスター・ムーン”という古い作品があります。ゼフィレッリ監督作品で、当時衝撃を受け1週間続けて観た作品です。舞台は違いますが、こちらもキリスト教の布教をテーマにした聖フランチェスコのお話。こちらは“沈黙”よりは、少し希望の光が描かれています。名作と思いますが、こちらもいろいろ考えさせられるそんな作品ですのでぜひご覧あれ。この手はと言う人はパスして、楽しい作品をお選びください。