2016.Dec.05
今日は新宿。先週に続きほんの少し遠出の映画鑑賞。いつも観たい作品が近くでやっている訳でもなく、娯楽的作品以外は中々大変。それでも苦にならないのは、作品から得る喜びが多いからに他ならない。久しぶりの新宿は、さすがにひとの数が半端ではなかった。
と言うことで今回は“エボリューション”を鑑賞。
この作品は、ネットで情報を偶然見つけ、わたしのアンテナに引っかかたもの。宣伝文句にリンチ監督とクローネンバーグ監督の名が記され、その手法や映像感覚が近いと賞賛されています。監督が女性という所も、大いに惹かれた一因。リンチやクローネンバーグの感性を女性が果たして持っているものなのか?と興味をそそられ好奇心に火がつきました。映画ファンならご存知でしょうが、前記の監督二人はかなり個性的な表現で知られその表現も賛否が分かれます。コアなファンも多い反面、受け付けないひとも同じくらいいるでしょう。
わたしは好きな方ですが、全作品が好きという訳ではありません。またどちらかと言えばリンチ監督の作品が好きで多く観ています。“ブルーベルベット”は好きな作品のひとつ。クローネンバーグ監督は、予測不可能な映像表現が多く、ある意味怖いもの見たさの神経を刺激するところにひかれます。少しグロい表現もあるのですが、尋常ではない感性は間違いありません。
さて、“エボリューション”。見終わった後の感想ですが、モヤモヤとした得体の知れない感覚が体を支配し、帰路の車中ボーッと作品を反芻していた私。確かに二人の監督の影響は間違いないと感じさせる作品である。監督の名はルシール・アザリロヴィック。監督作品としては6本目になるが、その芸術性の高い表現力は多くの映画祭で賞賛されているとのこと。映画は大きく分けると、娯楽性を重視したものと芸術性を重視したものに二分する。どちらも必要なことは当然。ただこの2つを満足させるのは、かなり大変である。そしてどちらが上でも下でもないのである。商業ベースでみれば観客動員数がすべてだが、だからといって良い作品ともいえないのが現実。すみません面倒くさい話になって来ちゃったので止め、話を元に・・・。
映像美の美しさは◎。ストーリーは難解ですが想像力の深さには圧倒されました。この発想がどんな環境から生まれたのか、想像もつきません。いちばん興味を引かれたのが、音楽(作られた音)を一切使わず自然音だけを取り入れた表現に強い感性を感じたこと。音がこんなにも怖く感じられたり、不安を増長させたり、穏やかにさせたりするのだということに気づかされます。例えば波の音。水中で聞く音と地上で聞く音の差に、息が詰まりそうな感覚を覚えます。内容は伏せますが、女性が創ったと思えない反面、女性だから創りえたと言える作品ではないでしょうか?生命の根源を逆手に取った、そんな感じを受けました。赤ちゃんがお母さんのお腹にいる間、羊水という水の中で成長する訳ですが、その成分は海水とほぼ同じと聞いた事があります。憶うに、そのあたりも監督の表現に繋がっているような気がします。ダークな内容ですので、覚悟をもってお出かけください。いろんな意味でインパクトのある作品です。
※プログラムが秀逸のデザインで、関わったスタッフの拘りを感じます。布張りで創られた装丁は、女性の感性を写し出す演出になっているかのよう。ここまで拘れる仕事に拍手です。