“桜の園”と言えばチエホフですが、わたしはどういう訳か吉田秋生の同名少女漫画とそれを映画化した作品の方を思い出します。どちらも思春期の揺れ動く心を繊細に表現していますが、原作よりインパクトが強いのです。とくに1990年公開の映画はオーディションで選ばれた若手女優たち(つみきみほ・白鳥靖子・中嶋ひろ子など)が、初々しい演技で内面感情を見事に演じ名作となりました。劇中でチエホフの“桜の園”を演じる演劇部の彼女たちがみせる、健全さと色気が交差した女子校という特有の匂いが戯曲や漫画をも超え、強く心に残ってしまったわたし。そこで映画のイメージをもとに装幀を創ってみました。表紙は二重重ねにし、下には桜の満開の木の写真を配し、そのうえに淡いピンクのトレーシングペーパーを巻き桜の花びらを型抜きにしました。それを織り込むという手法で表現し、触れると壊れそうな少女たちの儚い思いをシンプルに包み込んでみたつもりです。