

2016.July.11
しっかりしたテーマのドイツ映画“帰ってきたヒトラー"を鑑賞。なぜ今ヒトラーなのか?その疑問を解き明かすため劇場に足を運んだわたし。ヒトラーを題材にした映画は数多い。昨年観た“ヒトラー暗殺、13分の誤算”は記憶に新しい。当時の息が詰まりそうな、緊迫した時代の流れを丁寧に描いていて地味だが秀作でした。世界を震撼させた独裁者は、悪しき象徴として今もひとの心に残っています。
さて、今回の作品“帰ってきたヒトラー"。原作もそのままのタイトルで、世界42カ国で翻訳されドイツ国内だけでも250万部を売り上げたベストセラー。ヒトラーがタイムスリップし、現代に現れるという荒唐無稽のお話である。映画はちょっとドキュメンタリー風に撮られ、不思議な感覚を覚える。ヒトラーを演じた俳優(オリヴァー・マスッチ)も、見事に成りきり高圧的な滑舌で見る側を圧倒する。記録映像でしか観たことのないヒトラーの演説が現代に甦る。まさにプロパガンダを象徴する圧倒的迫力の姿がそこに描かれ、甦ったかのように錯覚する見事な演技である。はじめはその一挙手一投足に笑いが込み上げてくるのだが・・・。気がつくと知らない間に、その演説に耳を傾けている聴衆(わたし)がいる。ここが怖いところである。ひとは弱いから、強いものに憧れる。そして知らず知らず自身を見失い、メディアの大きなうねりに身をまかせてしまう。そんな怖さを最後に感じてしまうのは、わたしだけではないはず・・・。笑いたいけど、笑えないそんな作品です。
いま、ヨーロッパいや世界が抱える不況の嵐に、一石を投じた風刺作品がここに登場しました。世界はいま強い指導者の登場を望んでいるのかも知れません。されどヒトラーである?!?!?!
さて、みなさんは何を感じ何を思うのでしょうか・・・。PCやスマホを使った現代の情報収集を観たヒトラーの輝いた目。もし大戦中にこのテクノロジーを持っていたら、ヒトラーは世界を征服していたかも解りません。なんと恐ろしいことでしょう。見終わったあと、いろいろと考えさせられる作品である。
P.S. プログラムのデザイン素晴らしいです。チョビひげを巧みに生かしたシンプルな表現に拍手です。