2016.Apr.22
本作品“レヴェナント”で、ディカプリオがやっと手にしたアカデミー賞。その渾身の演技は、凄まじいばかりの迫力で怖い。ここのところ立て続けてアカデミー賞を獲った作品を鑑賞している。別に意識しての鑑賞ではないのだが、機会が重なって3週連続に・・・。前二作品ともとても感動したが、どちらの作品も内容もさることながら俳優さんたちの迫真の演技にこころ打たれたものばかり。そんな今年のアカデミー賞の審査は、さぞや大変だったに違いない。ノミネートされた作品はほとんど鑑賞しているが、ほんとうにどの作品も出演している俳優さんたちが凄い。その並みいる俳優を押しのけての主演男優賞は、観れば納得です。ただただディカプリオの迫力に圧倒されます。セリフこそ少ないが、身体をはった魂の演技に鳥肌です。いままで何度も主演男優賞にノミネートされてきたが、オスカーをその胸に抱くことがなかったデカプリオ。やっと手にしたオスカー像には、こころから拍手を贈ります。
作品はサバイバルをテーマにし、人間のもつ計り知れない力とそれを生み出す執念という感情をどこまでも追求している。大自然の中に置かれると、人間はなんと無力でちっぽけな生きものだろうと思い知らされる。だが人間はどんな生きものより強かで、生への執着心が強い。それを突き動かすもの、それは間違いなく愛だとこの映画は謳っている。大自然の映像がことばを失うほど、厳しく美しい。厳しさ故に美しいのか、美しいから厳しいのか?その自然を背負い、泥にまみれ、傷つきもがき、何度も死の淵から甦る主人公。まさに“甦えりし者”とはこのこと。ディカプリオが演じたヒュー・グラスという人物は、アメリカ開拓初期に実在した伝説の人物だそうだ。ここにもまた、「事実は小説より奇なり」が描かれています。相手役フィッツジェラルドを演じたトム・ハーディにも、負けず劣らずの演技で拍手である。ふたりの決闘シーンは、鬼気迫る迫力で最後までハラハラさせられる。所々で神を象徴するかのような演出がなされる。廃墟の協会。獣の頭蓋骨が積み上げられたピラミッド。シンボル化されたそれらの演出が、真っ赤な血で染められた大地での闘いをまるで癒すかのようにひときわ優しく包み込む。見事な演出で映画史に残る一本に数えられるに違いない。カメラワークの見事さは言うに及ばず、表情を強く表現するために極端に顔に近づけたローアングル撮影は、その息づかいまでもが伝わる。レンズが曇る演出は極寒の環境と、生と死の狭間でもがく人間の極限状態を伝え、まるでその場にいるような感覚になる。この作品もまた、ひたすらに重たい。アメリカ映画界は最近リアルな事実ものが多く、華やかな作品が影を潜めているように思うのだが・・・。私だけが感じているのでしょうか?こう言う作品は、嫌いではありませんが・・・。
P.S. 坂本龍一さんの音楽は重厚感に満ち、作品のもつ深いテーマを見事演出しており、流石世界の坂本でした。