
2016.Apr.11
まず、作品を観ていままでに感じたことのない感覚を味わったことをお伝えしておきます。作品名“ROOM”。原作は2010年に発表された、エマ・ドナヒュー原作の同名小説。ある程度の予備知識を持って望んだこの作品だが、もうひとつ別の理由が?。TVのニュースでみなさんもご存知でしょうが、日本でも酷似した事件が報道で世の中を驚かしています。興味本位で観るつもりはさらさらなく、当事者のこころがどれほど見えない力と闘っているのかを少しでも感じることが出来ればと・・・。
原作も映画もひとの手で創られたもの。それでもこの映画が観せてくれたものは、底知れない強いエネルギーの波でフィクションとは感じられませんでした。7年もの間、天窓ひとつの小さな部屋で生きて来た母と子。母は現実を受け入れただただ、こどものため生きている。こどもはその空間(部屋)だけがすべての世界で、TVで観るものが現実とも空想とも解らない。生まれたときからそこを出た事がないのだから、知る由もない。母が手をつくし理解させようとするが、触れる事のない現実は伝わりようがない。そんな息苦しいスタートではじまる今作品である。想像してみただけでも、息がくるしくなります。もし現実なら・・・。
親子を題材とした作品は数ある。名作も数えきらないほど。この作品“ROOM”は、きっとその中でキラ星のごとくひかり永遠に語り継がれる事でしょう。涙をさそうシーンももちろんありますが、なんと説明していいか解りませんが溢れる涙の質がちょっと違います。悲しいとか寂しいとか、そんなものではなくもっと強くて深いエネルギーとでも・・・うまく表現出来なくて申し訳ない。ぜひ、足を運びその波動を体感してください。
登場人物は多くありません。ほとんどがママジョイと少年ジャック(5歳)のお話。前半は何やら不思議な感覚で物語がはじまり、気がつくととんでもない状況の中におかれていることに気づかされます。そしてスリリングな逃亡のはて・・・奇跡の生還。
この作品の凄いのはこの後・・・。そこがこの作品の本当のテーマだと、最後に気づかされます。凄い作品だと思います。
ママを演じたブリー・ラーソンはこの演技で、今年度アカデミー主演女優賞を見事獲得。並みいる常連の女優さんたちをはねのけての、文句ない演技と観れば確信します。そしてジャックを演じたジェイコブ・トレンブレイ。凄過ぎて言葉が見つかりません。アカデミー賞こそ手に出来ませんでしたが、放送映画批評家協会賞をはじめ、本当のプロから絶賛され数多くの賞を手にしたそうです。脇を固めた俳優さんたちも、すばらしくこころの複雑な動きを見る側にひしひしと伝え本当に見事でした。
感想ですが、「母の愛は海よりも深し」そして「こどものもつエネルギーは宇宙より大きい」といったところです。子どものもつ柔軟かつ強い感性は、わたしたちの想像を遥かに超えたものと確信します。絶対にお薦めの一本です。
P.S. もう一度部屋を訪れた母子のラストシーン。ジャックのセリフ
“この部屋縮んじゃったの?”と、部屋を去る時に言う
“・・・バイバイ天窓さん”は忘れる事の出来ない言葉となりました。