3・11 東日本大震災から5年。昨日の夜、その番組はやっていました。“NHKスペシャル・風の電話”(残された人々の声)。突然飛び込んできた、白い電話ボックスの映像。緑に囲まれた美しい庭の片隅にポッンと佇む、小さくて可愛い電話ボックス。いったい何がはじまるのだろう・・・。
カメラが遠隔でその電話ボックスを映していると、ひとり、またひとりとその中に・・・。そこは東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県大槌町。町外れの小高い丘の上に、それはまるで海を見下ろすように立っています。震災で大切なひとを亡くしたひとたちが、今日もひとり。繋がっていない電話を手に、話しかける「元気でやってるよ!」。時が過ぎてもこころの傷は癒える事無く、いまも残されたものに重くのしかかる。そんな現実が胸を打つ。その電話は、逝ったものと残ったものとを繋ぐこころの架け橋となり多くのひとを包んでくれている。
ある男性は失った家族を思い“なんのために、生きているのか解らない”と言葉を絞り出す。こころが痛い。そしてある女性は、ボックスに入り黒い電話機のダイヤルを回し動かない。そしてひと言も言葉を出す事無く、扉の外へ。またある少年は、「風の電話」の噂を聞き青森から・・・。ボックスに入り受話器を取ると、“とうさん、聞きたい事がある。なんで死んだんだよ!なんで俺なんだよ!!”と叫ぶ。
泣いては失礼だと解っていても、涙が止めどなく溢れ苦しかった。ここ数日、震災後の現地が写し出され、いまだに兆しの見えない復興の姿が報道されています。「いったい何をやっているんだ!」とぶつけようのない怒りが湧いてくる。なにも出来ない自分が歯がゆい、そして情けない。番組の最後に少年の家族が再び訪れ、妹、弟、そしてお母さんがそれぞれの想いを電話の向こうに・・・。止まってしまった時間を、みんな頑張って動かそうとしているのが伝わる。みんなずっと我慢していたのだろう、そんな会話はほんとうに胸が締め付けられました。“口にしたらこころが折れちゃうから・・・。”と言ったお母さんの言葉が突き刺さる。“壊れそうになったら、又来るからね!”の言葉を残し家族は「風の電話」を後にしました。
もう5年。それともまだ5年。どう思うかはそれぞれ。だが、もう時間は戻せないということだけは確かなこと。前に進むために何をしなければならないのかを、もう一度考えなくてはいけない時が来ています。そして出来る事を考えなくては・・・。こどもともう一度いっしょに観て、考えてみたいとこころから思う。ぜひ、再放送を・・・。