2016.Feb.26
久しぶりに味わい深く、こころに沁みる作品に出会いました。作品は“キャロル”。世界が注目する2大女優が共演する、大人の恋愛映画に静かな人間愛を肌で感じたわたし。物語の軸に同性愛がテーマとして描かれてはいますが、ゲスな言い方ですがいやらしい感じはまったくなくむしろピュアな愛が見事な映像表現で描かれ心に残りました。いまでこそLGBT(性的少数者)は世界中で認知され、さほど特別視はされなくなった現代ですが、今回の映画は50年代の保守的な時代が背景。難しいテーマに挑んだトッド・ヘインズ監督と、2大女優に見事な表現に大満足のわたし。キャロルを演じたケイト・ブランシェットの堂々とした気品ある演技に、流石アカデミー賞とため息をつき、そして相手役テレーズを演じたルーニー・マーラの、何とも言えない無垢で純真な演技にメロメロです。ルーニー・マーラはいま最も注目を集めている新進女優さん。わたしは“ドラゴン・タトゥーの女”ですでにKOされています。いま一番好きな女優さんのひとりです。彼女はこの作品でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞しましたが、当然といって良い見事な演技でした。いつも体当たりの演技ですが、これからどこまで上り詰めるのか予想さえ出来ません。“ドラゴン・タトゥーの女”の時とは打って変わって、触れると壊れてしまいそうな繊細でかわいい女性を見せてくれました。今作品は50年代の雰囲気を見事に演出し、まるでポートレートを繋ぎ合わせたような美しい映像で表現され、2人の女性を見事に浮かび上がらせています。とくに印象的なのは、ガラス越しに映し出される憂いに満ちた2人の表情。こころの中の繊細な動きが実によく表され美しい。またアイテムになるエレガントなファッションや車、ヘアースタイルとメイクアップ、そしてBGM。どれをとっても秀逸で何とも言えない艶を感じさせてくらます。ケイト・ブランシェットは息を呑む程奇麗だし、ルーニー・マーラは抱きしめたくなる程健気で可愛いし・・・。ただただ、ため息です。人を好きになるのには、きっと理屈はないのでしょう。わたしは同性には興味ありませんが、そのひとが本当に素敵だと思ってしまったら致し方ないような気持になりました。
以前観た“アデル・ブルーは熱い色”も同じテーマを扱いすごく印象に残っている作品ですが、またひと味違う美しい映画です。この手の作品は、大抵は別れが待っているのですが、さてこの映画は・・・。
P.S. 真っ赤なルージュやマニュキュアがキャロルの美しさを強調しインパクトを与えていますが、その裏側にある悲しさ切なさを知れば知る程その赤が目に痛い。それにしても冒頭、2人がはじめて出会った瞬間のキャロルの目力は凄い。あの瞬間から二人は結ばれていたとラストは納得させられます。また劇中、キャロルが「あなたは天から落ちたよう」とじっと見つめ言った時のテレーズの表情はめちゃ可愛いぃです。本当に二人の演技力が光る作品でした。