2015.Dec.08
師走最初に足を運んだ作品は“リトル・プリンス 星の王子さまと私”。サン=テグジュペリの原作は、世界で最も知られている創作童話。これほど世界中で読まれている本もないであろうと思う名作。私自身この本は、バイブルと言っても過言ではありません。もちろん箱根にある、「星の王子さまミュージアムは一日中過ごしていたい場所のひとつ。
そんな原作をモチーフに新たな脚色を加え、現代に甦る「星の王子さま」。その昔ミュージカル映画「星の王子さま」(1974年)は、いまも忘れられない映画のひとつ。物語は何十回と読み返しているので言うまでもないが、その映画の印象深さは作中に登場するヘビとキツネの演技の凄さ。ヘビ役を世界的舞踊家(演出家)のボブ・フォッシーが演じその生体を見事に躍りで表現し、丁度20歳だった私はそのパフォーマンスに驚愕した。そしてもうひとりキツネ役を演じたのがジーン・ワイルダー。名匠メル・ブルックスと組んだ作品はどれも記憶に残る優れものばかり。そんな彼の演じたキツネの見事だったこと。とくに目の表情ときたら、本当のキツネに途中から観えてしまうほど凄かったです。どちらも衣装は着ているものの、生身の人間で演じていながらヘビやキツネになりきっていたのが今でも忘れられません。後で知ったことですが、ジーン・ワイルダーはこの役をもらってから、何ヶ月も動物園に通いつめたそうです。さて、また昔話にのめってしまいました、スミマセン。
さて、“リトル・プリンス 星の王子さまと私”。久しぶりの忘れかけていた憶いを思い出させてもらいました。大好きだった物語でも、歳を重ねて薄らいでいたことに気づかされました。よかったです。「ありがとうと」素直な気持でこの作品に感謝をします。新しい切り口で、“星の王子さま”が再びわたしたちの前に姿を現しました。CGとアナログ的表現を巧みに融合させた、構成は見事で人物は別にしても背景描写は見事に現実と夢の世界を素晴らしい映像でみせてくれました。特にお伽噺(おじいさんの昔話)の描写は人形を少しずつ動かすストップモーション・アニメーションという古典的な技法を使い、見事に臨場感や原作の持つ温かさ優しさを包み込み見せてくれます。そのふたつの技法を、こんなに見事に融合させた作品に拍手です。CGキャラクター監修をしたのは、日本人の四角英孝氏。彼の制作時のコメントに、有名な原作をCGにしていいものか躊躇したと言っています。そのくらい原作のもつ深い世界観があることを知っている四角氏だからこそ、このような素晴らしい作品が生まれたのかも知れません。原作でも何度も泣かされたわたしですが、今回も新しいスチエーションの中、泣かされました。でも、気持ちの良い涙でしたので幸せな気分になりました。再び原作を読み返したくなりました。昔と違った気持をみつけることが出来ると嬉しいのですが・・・。
P.S. 遠い昔(中学時代)、大好きだった兄チャンがくれた、はじめての本が“星の王子さま”でした。