2015.Nov.30
11月最後に観た作品は、こころに残る歴史秘話でした。作品の感想の前にちょとだけ余計な話を・・・。わたしNHK「歴史ヒストリア」という番組が大好きで、時間があれば必ず観ております。歴史上の人物や歴史そのものにスポットをあて、一般人でもすんなりと入ってくる解りやすい解説と溢れ話は見る側を多いに楽しませてくれます。学校の教科書では知ることの出来ない話がとても興味深く、いつも“ヘ〜ェエ!”と思わせてくれます。歴史はある意味人間が資料に基づき想像して創り上げたもの。最近ではよく事実とは違っていたなどという、歴史解釈も数多くでて来ております。それゆえ創造力を掻き立てる歴史は、へたな小説よりも面白いです。
さて、今回の作品“黄金のアデーレ 名画の帰還”もまさに、歴史に隠された秘話といっていい物語。かの有名な絵画、クリムトの「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像」が重要なアイテムとなる作品である。その名を知らぬものはないほどの、有名な作品である。独特の画風と金箔を施した装飾的な作風は、いわゆる「黄金の時代」を象徴している。その名画に秘められた時代の秘話(悲話)が、この作品で証されます。絵画マニアの方たちは、たぶん知っている話なのでしょう。絵画は大好きですが、このような裏話はさすがに知りませんでした。
“ヒトラーの暗殺”の時にちょっとだけ触れましたが、歴史の裏側で起きた出来事の深さや重さは、表舞台の話よりも正直とても興味深い。いろいろな歴史的背景が観えてくると、その出来事の本当の意味が浮かんできます。大げさに言えば、そんな時間の積み重ねで本当の歴史が創られているのだと知ると、何だか生きることの意味がさらに深まります。
内容は証しませんが、この作品も“ヒトラーの暗殺”同様ある意味反戦映画と呼べるのではないでしょうか?過去と現在を交互に展開しての構成は、緊迫感にとみ最後までアッと言う間に駆け抜ける。監督(サイモン・カーティス)のなみなみならぬ底力を感じました。戦争は終わってもその傷跡は永遠で、その傷みは消えること無く続いているという事実。だからこそ、ひとはその事実を認め受けいることで、2度と過ちをおこしては行けないことを悟るのではないでしょうか。
主人公のマリアを演じたヘレン・ミレン。大女優がみせた演技は、言葉に表せないほど見事でため息もの。気品と深い慈愛に満ち、そして何ものにも屈しない精神力を見事に演じて観せてくれます。きっとこれは彼女自身でもあるのだろう。そしてもうひとり、彼女をサポートする若手弁護士ランディを演じたライアン・レイノルズ、彼も実に繊細な演技で見事に自身最高の闘いを勝利する。この2人はこの作品で間違いなく、今まで以上の評価を得ることことになるだろう。
ラストの判決が下った瞬間の2人の表情は、清らかで美しく胸を締め付けました。それはマリアが何十年もの間抱えてきた、“戦争と言う重い荷物”をおろす瞬間だったに違いありません。こんな作品を見逃しては損をします。ぜひ、劇場へお出かけ下さい。