2015.Nov.19
“ヒトラー暗殺、13分の誤算”を鑑賞。今年もあとわずか40日。過ぎ去る時間は年々早くなり、焦るばかりの毎日である。いつもはひとりで鑑賞する映画だが、今回は古い友人との鑑賞。映画を好きなのは観賞後の余韻に浸ることに他ならない。観賞後に映画について語り合うのも、久しぶり・・・。又違った見方など発見出来、話は尽きない。
“ヒトラー暗殺、13分の誤算”は実際にあった歴史的実話なのだがいままでほとんど知られていない。ことしは数多くの戦争ものを観たが、この作品も印象に残る一本になりました。少し前に観た“イミテーション・ゲーム”がそうであったように、この実話もまた歴史が替っていたかもしれないことに何か不思議な感覚を覚えました。実話を元にした作品では、運命の悪戯で大きく変わってしまう歴史の重みや人間ドラマが隠されていることにいつも驚かされる。この作品の主人公のエルザー(クリスティアン・フリーデル)はごくごく普通の平凡なドイツ人青年である。一見主義や主張など強くもつ人間でもないが、自分の中の正義で大胆なヒトラー暗殺計画を企てる。この人物の名は、戦後も長く封印されあまり知られることがなかったのには、同じドイツ人であったことが国の威信に繋がったようである。時代が大きく変化し、ようやくいま事件が世に問われ彼の名が世界に知られることになった。だれにも告げずたったひとりで闘ったその勇気に、ただ脱帽である。なにが彼をここまで突き動かしたのかは、正直解りません。ひとつ言えることは、彼はだれよりも平和を願っていたことである。純粋に人を愛し、仲間を大切にし、そして国を思っていたのだろう・・・。もしこの計画が成功していたらと思うと、本当にこころの芯から震えて来ます。劇中でゲシュタポの必要な拷問に耐えながら最後まで単独犯を主張するエルザーに対し、事実だと解っていても何とか政治的複数の犯行にしたいナチス権力の攻防が戦争の重みを深く感じさせる佳作である。この映画で感じた一番の関心は、戦争中に同じドイツ人でありながら国の未来を考えヒトラー暗殺を実行した人がいたことの驚きである。ひ弱な感じの青年の中にある、その勇気と信念はだれも真似出来るものではありません。“イミテーション・ゲーム”の主人公である数学者アラン・チューリングもそうであったが、歴史にはまだまだ知られていない数多くの事件や人物がいるのだろうと思うと何故かワクワクするのはどうしてでしょうか?映画と言う枠でこのような題材を扱い、これからも沢山紹介してくれることを楽しみにしています。
※この映画でとくに引かれたのは、密室でのリアルな描写と相反する生活の中の自然豊かな描写との対比。生活感が自然であればあるほど、戦時下の進む時の移り変わりが恐怖をそそり息が詰まる。作品では死刑の場面が二度出てくるのだが、演出の深さが描写に反映されこころに残る作品になっていることを言っておきましょう。もうひとつ、出演している俳優さんたちのエルザー(クリスティアン・フリーデル)はもとより、彼女のエルザ(カタリーンナ・シュットラー)、ドイツの警察所長ネーペ(ブルクハルト・クラウスナー)、そしてゲシュタポ局長のミューラー(ヨハン・フォン・ビューロー)と癖のある難役を見事に演じていました。とくに警察所長ネーペ役のブルクハルト・クラウスナーの演技は秀逸です。