2015.Nov.06
11月に入り、今年も後二ヶ月。年末が近づく度1年の月日に思いを馳せ、その時間の早さに残された時の大切さを噛み締める毎日です。さて、今月一本目の作品は、“EVEREST”。公開前から観たかった映画のひとつ。実話を元にした作品だが、半分はドキメンタリー要素が含まれ山の美しさと怖さをリアルにかつ臨場感豊かに描いていて圧倒される。むかし仕事の関係で山雑誌の編集デザインをしていたことがある。山は全くの素人だったが、5年程仕事に携わり山の持つ数多くの素晴らしさに触れると同時に自身の小ささを教えられた。
この作品は山(自然)の持つ得体のしれない力をきめ細かく描き出し、そして命の尊さをしっかりと描き出しています。さらに作品は3Dで撮影され且つIMAXにて表現。臨場感豊かにスケールの大きな作品となり目をクギヅケに・・・。この映像技術はまさにこの映画のような作品のためにあるのではと思う程、素晴らしい作品に仕上がっております。「人は何故、山を目指すのか?」と劇中言葉が交わされる。定番の「そこに山があるからだ!」という回答に主人公たちが笑う。この言葉のもつ重さは、計り知れない。素人のわたしが言うのは失礼だが、そこには理屈など存在しない世界観がありそれに見入られた人間たちが、まさに神に挑んでいるそんな感じがした。時に神は微笑み、そして怒る・・・。勝ち負けではないが、そこに挑んで行く人たちはやはり選ばれた人に違いない。そしてどんな結果が待ち受けようと、後悔のない終着点へと導いてくれるそんなラストに涙してしまいました。わたしには無理ですが、この映画を通しほんの少しだけ夢を見ることが出来ました。出演者たちはもちろんのこと、監督、撮影スタッフの作品への強い思いと拘りが、見る側にしっかりと伝わるアドベンチャー映画ではないでしょうか。
作品の中で“人と人の繋がり”がひとつのテーマとして描かれています。人はひとりでは何も手に入れることが出来ないものだと思い知らされるが、一方でひとりでも生きて行かなければ・・・とも。戯言ですが、もし仮にわたしがこの過酷な山(EVEREST)に挑むような人間に生まれていたら、ひとりで挑戦する道を選ぶかも知れません。何故って言うと、目の前で仲間を失う辛さに耐えられるほど強くないことを自分が一番解っているからです。
むかし、植村直己さんの展覧会をある百貨店に観に行ったことがあります。会場にいた植村さんを見かけましたが、とても小柄で笑顔がとても印象的でした。正直、この人があんなに凄いことをやった人なんだと思ったことを再び思い出しました。わたしは素人ですので生意気に思われる方もいると思いますが、今回の映画では商業登山もひとつのテーマとして扱われております。植村さんが単独に拘った生き方を選んだのにはきっと深い思いがあったのに違いないと、少し感じてしまった作品でした。
※植村直己さんは、登山家・冒険家として世界で知られる。数々の偉業を達成したが、1984年2月12日に世界初のマッキンリー冬期単独登頂を果たし、翌13日に消息を絶った。享年43歳。あれから31年の時が経ち、いまも後に続くひとたちが続く。そして山たちもその美しい姿で、緒戦者を待ち受けているかのように今日もそびえ立っているのです。