2015.Oct.06
ここしばらく観たいと思う作品がなくもんもんとしていましたが、やっとみつけて馳せ参じました。作品は“罪の余白”。日本の映画ですが、予告を観て引かれるものがあり鑑賞に・・・。原作は芦沢央(よう)さんで、女子校で起きた事件から浮かび上がるいじめの実態に迫る心理サスペンス。まずいちばん衝撃だったのは、主人公咲を演じた吉本実憂のしたたかな演技。美しい少女の裏側に潜む得体の知れない狂気の世界を見事に演じ、見る側の背筋を寒くする。とんでもない新人が出て来た感じがする。これだけインパクトのある役を演じると、次回作はさぞ大変ではないでしょうか?作品中では、基本笑顔はまるでない。時折みせる笑顔と涙は、なにか嘘くさく冷たい。まさにアイスドール。言葉の使い方も巧みなうえに高圧的でどんどん相手を追いつめてゆく。裏と表の顔を表情と言葉で表現し、相手を追い込んでゆく姿は息が詰まる程怖い。“美しいバラには刺がある”とはまさにこのこと。映画を通り越し、女は怖いと本気で思わせてくれました。
相手をした心理学者の安藤(被害者の父)を演じた内野聖陽も、悩める父を演じ苦悩の表情は見事でした。小説の中の話と思って観ても、こんなことってあるのかも・・・?と思ってしまう。最近起きている事件を知る度、日常の中にひっそりと潜む狂気が、いつ出てもおかしくないそんな時代が来ている気がしてならない。この映画はそんなことを思わせてくれるちょっと怖いお話です。
観賞後なんかモヤモヤとした感情が収まらず、一日中灰色な気分でした。加害者・咲がどうしてあんな人格になっていったのか、その負の背景を自分なり考えたが映画だけでは辿り着きませんでした。家庭環境や人間関係など、これは原作を読むしかないかも???で、原作はそこまで描かれているのか少々きになるところ。ここまでこころモヤをかけた作品、あなたも観て見ませんか?感想を聞きたいものです・・・。
P.S.
昨年観た“渇き”という作品を思い出した。こちらも美少女の裏側の顔を描いた作品でしたが、かなり過激な演出でエキセントリックなものになっていました。こちらが動なら、今回の“罪の余白”は静の怖さといった感じです。タイプの違う2人だが、“渇き”の主演の小松菜奈といい、今回の吉本実憂といい、これからがたのしみな女優さんたちの登場である。