2015.Sep.07
さて、二本目の作品“イミテーション・ゲーム”。こちらも観たかった作品で、ギンレイさんは本当にお客目線に立ったGood-Choiceをしてくれます。映画好きのこころを本当によく解っています。あと、組み合わせが実に絶妙です。“イミテーションゲーム”も“フォックスキャッチャー”と同じく事実をもとにした作品で、こちらも今年度のアカデミー賞にノミネートされた作品。こちらはグレアム・ムーアが見事脚色賞を受賞しました。振り返ると今年のアカデミー賞は、派手さはないが実に濃い重厚感に富んだ作品ばかりで、さぞ審査員も苦労したことだろう。作品賞にノミネートされた、「アメリカン・スナイパー」「グランド・ブタペスト・ホテル」「博士と彼女のセオリー」「バードマン」「イミテーション・ゲーム」「セッション」「6才のボクが、大人になるまで。」「グローリー 明日への行進」。8作中6作品を観たわたしですが、どれも甲乙のつけがたい力作ばかり。そしてみな熱演である。
さて、“イミテーションゲーム”ですが、こちらもいままで表に出ることのなかった、第二次大戦後、英国政府が50年以上隠し続けた
極秘の機密事項とそれに関与した、ひとりの天才数学者の実話である。作品内容もさることながら、主役アラン・チューリングを演じたベネディクト・カンバーバッチが素晴らしい。常人には理解不能な特異な性格を持つ人物像をものの見事に演じてみせてくれた。時に滑稽でそしてときに傲慢な性格はひとのこころも平気で踏みにじるが、それは裏を返すとまぎれもなく純粋という証。そんな人物を実に繊細に演じたカンバーバッチは、この作品で間違いなく高い評価を獲たことだろう。第二次世界大戦中、ドイツ軍が世界に誇った“暗号機エグニマ”の暗号解読に挑んだチューリングと仲間たちの長い闘い。暗号解読のために行われたユニークな人材集めや、コンピュータの先駆けとなった、解読機「クリストファー」の完成までの苦労など、う歴史の上でもヘ~って思う逸話ばかり。それだけでも充分面白いが、さらに深い話が詰まっているので、色んな意味で勉強にもなり感動です。戦争を終わらせるために、こんなことが人知れず行われていたことが50年の歳月を経て、ようやく証されたこの事実はわたしたちが知らなければいけないことかも知れません。ちょっと前に観た、「日本のいちばん長い日」がそうであったように・・・。
劇中でみせる、孤独な天才数学者チューリングの悲哀にとんだ表情は、決して忘れることのできない。天才ゆえに語れない秘密とそれをゆるさない時代。数奇な運命で人生を終えチューリング博士が残したものは、現代におけるコンピュータ開発の発展は言うに及ばず。人種差別の壁をも、いままさに崩そうとしている。いま彼が生きて存在したのなら、どれだけ科学は進歩したのだろうか?部屋に閉じこもり解読機「クリストファー」と暮らす彼が、涙を流し「クリストファー」と離れたくないと言うシーンは、博士の素直な気持が詰まった言葉である。もっと長く生きてほしかったと、こころから思うわたしでした。