2015.Sep.07
しばらく映画を観れなかったわたし。観れなかったと言うより、観る余裕がなかったのが事実。PC癇癪事件は先日書きましたがそれがすべて。ということでひさびさの映画鑑賞。ギンレイにて、頑張って2本も観てしまいました。二作とも見逃していた作品ですが、どちらもじわじわと染み込んでくる素晴らしい作品でした。映画を観る度に、感じるさまざまな発見。今回はその余韻も強く、いろいろな想像が頭を駆け巡り、ひとり自分の世界に入り込んでしまった。
まずは一本目。第87回アカデミー賞にノミネートされ、賞こそ逃しましたがまぎれもなく秀作です。実話をもとにしたこの作品は、はじめからすこし重たく暗い感じでスタートし、最後までそれは続きラストの悲劇を描き出す。アマレスというスポーツに生きる兄弟。その深い絆に結ばれた2人の隙間に舞い込んだ誘惑の穴に、知らず知らず落ちてゆく主人公をストイックなまでに表現した監督に拍手です。
監督は「カポーティ」「マネーボール」と立て続けに大ヒットを世に送り出したベネット・ミラー。「事実は小説より奇なり」という全米を震撼させた事件の謎を紐解くように、被害者と加害者の深層心理に切人込む見事な演出は秀逸。結局は最後まで事件の謎は解明されないが、それが逆に見る側に強く残りず~っと引きずってしまう。中途半端なミステリー小説より遥かに深い、人間の中にある計算出来ない感情のスパイラルがそこに映し出されこころに刻まれます。主人公のひとりマーク・シュルツ(1984年ロス五輪金メダリスト)とその兄デイブ(同メダリスト)。全然ちがう生き方をする2人が、見事にアマチュアスポーツ(レスリング)のもつ独特の閉鎖感を浮き彫りにし見せてくれる。普通のひとには入り込めないストイックな男の世界が・・・。そしてそこに割って入るアメリカきっての大財閥ヂュポン家の御曹司ジョン。マークを演じたスティーブ・カレル、兄デイブを演じたマーク・ラファロ、そして異彩をはなつヂュポン家の御曹司ジョンを演じたチャニング・テイタム。3人の演技派見事としか言えない、鬼気迫る演技に脱帽である。それぞれにその人物の内面を深い洞察力で表現し観客のこころは釘付けにする。とくに加害者ジョンを演じたスティーブ・カレルは、その常気を逸した姿を強く印象づけ忘れることのない存在になりました。聞けば彼はコメディーが中心の役者さんだったと知り、その才能はこれからもきっと私たちを驚かせてくれるだろう。この実話に基づく事件は、いろいろな意味でわたしの中に疑問を投げかけてくれました。例えばオリンピックで金メダルに輝いても、そんなに恵まれた人生を送れないという事実。日本では良く聞く話だが、まさかアメリカも同じとは・・・。そしてやはりある、地位と名声に群がる輩の裏の人間関係。そんな一面をも描き出した、この作品の意味は大きい。重たい作品ですが、鑑賞の価値は大いにありです。何故、こんな悲劇が生まれたのかを、観てそれぞれの人物像に迫ってみるのも面白いと思います。