

2015.Aug.18
毎年8月15日が近づくと一斉にメディアが動きだし、特集番組がはじまる。どれも戦争がもたらす、不幸の記録を公開し二度と繰り返してはならないことを訴える。しかし、今のひとたちにどれだけ伝わるだろうか?不謹慎なことを言いますがどんなにリアルな作品を観ても、体験のないわたしたちに実感はありません。映像が例えどんなにリアルに表現されていても、それはバーチャルの世界に他ならない。だがそれでも観ることで、生きているわたしたちが忘れてはいけない過ちを認識することは可能です。そして平和の意味を考えることも・・・。
観たかった2本目の作品“日本のいちばん長い日”を観た。原作は半藤一利氏のノンフィクションで、1967年に巨匠岡本喜八監督により、一度映画化されたこの作品。当時は様々な事情により、天皇陛下を前面に出す表現はせず戦争終結までの数日間を描いていた。だが今回の作品は、天皇陛下(昭和)の戦争終結への御聖断を真っ正面からとらえ、その苦悩と覚悟を克明に描いて観せてくれました。良くも悪くも日本が平和になった証拠かも知れません。作品は昭和天皇をはじめ、陸軍大臣の阿南惟幾、総理大臣の鈴木貫太郎の3人を中心に終戦までの道のりを丹念に表現しています。そして当時の緊張感をリアルかつ純粋にとらえ、決断を迫られる男たちの最後の闘いが息苦しいほど重くのしかかります。いまある平和な日々が、こんなにも大変な歴史の上に成り立っていることをあらためて思い知らされます。
ひとつ間違えば日本は滅んいたかも知れない事実。天皇、阿南、鈴木の信頼関係なくして終戦は訪れなかったことだろう。ポツダム宣言を受け入れるか(降伏)否か(決戦)。その決断に関わっていたひとたちの重責に、身震いし息を呑みました。この作品は映画とかそういう枠を越え、いま日本人が観なければいけないものだと思います。この事実を受けとめ、これからの生き方をを考えてみてはどうでしょうか?
※俳優さんたちの魂のこもった演技に、拍手です。阿南陸軍大臣を演じた役所広司さんは、天皇陛下に対する無償の愛を、鈴木貫太郎総理を演じた山崎努さんは、力に屈しないふところの深い男を、そして昭和天皇を演じた本木雅弘さんは、凛とした覚悟をそれぞれに演じ素晴らしかったです。プレッシャーなどという次元を越えた大役(天皇)は、本当に見事でした。また、若き陸軍少佐を演じた松阪桃李さんも鬼気迫る熱演で、ただひたすらに日本を思う熱い気持は伝わってきました。
このとき関わったひとたちはまぎれもなく日本国を愛し、誇りを持っていたに違いありません。いまのわたしたちがすっかり忘れかけている、日本の魂がきっとそのときあったのでしょう。
憲法改正の法案が世をにぎわしています。
もう一度あらためて、「戦争をしない国」のことを考えてみましょう。P.S.
緊張感の波が押し寄せる物語の中で、さりげなくラジオから流れる英語の歌“ウィ・ウィル・ミート・アゲイン(また会いましょう)”という曲が耳に強く残りました。「鬼畜米英」を国民に強く押しつけ英語の単語さえ言えなかった時代の終わりをさりげなく暗示させる演出。これがほんとうだったのかは解りませんが、ほんの一瞬の安らぎがそこにありました。また、鈴木貫太郎総理がひとりトランプで占いをやっているところなども印象的でした。そしてもうひとつ、天皇が皇居の中で散策をしているシーンがとくにこころに残りました。植物学の専門である陛下が、ハルジオンを見つけ「外来種は取り除かないといけないネ」と呟く言葉。さりげない言葉に日本への深い思いを感じました。本当に言われたかは解りませんが・・・。