2015.July.07
はじめて、豊洲にやって来ました。同じ江東区とは思えない新しい街といえる場所でした。なぜここにと言うと、今日の映画が近隣で探しここでしかやってなかったから・・・。その作品は“悪党に粛正を”。久しぶりの西部劇です。近年、公開される作品の数がなくなった西部劇。その作品はなんとアメリカ映画ではなく、クリスチャン・レヴィングという監督と国際的俳優マッツ・ミケルセンがタッグを組んで挑むウェスタン。2人はともに北欧デンマークの生まれ。むかし、イタリアに流れ一代ブームを巻き起こしたマカロニ・ウェスタン(イタリアではスパゲッティウェスタンと呼ばれていた)の再来である。いまをときめくクリント・イーストウッド監督が、マカロニ・ウェスタンで名を上げアメリカに凱旋したのは周知の事実。当時、アメリカの西部劇にはない娯楽性が人気を呼び世界を席巻しました。“夕日のガンマン“や“荒野の用心棒”など忘れられない作品たちが名を連ね、1960年〜70年に渡り映画ファンを喜ばせてくれました。
あれから40年を超え、ここに新しい西部劇が登場しました。レヴィング監督は幼い頃、西部劇にはまり大ファンになり今回その夢を実現したと聞きました。さらに主演はデンマークを代表する俳優ミケルセン。彼は昨年観た“偽りなき者”で2012年カンヌで主演男優賞を獲得しましたが、この一本でわたしは彼の素晴らしい演技力の虜になりました。そもそも最近観れなくなった西部劇に挑んだこの二人だけでも、興味津々ですが脇を固める俳優さんの豪華なこと。ヒロイン役はひとことのセリフすらなく表情のみで感情を表す難しい役どころ。演じたのはフランス生まれのエヴァ・グリーン。冷徹非情の適役はアメリカの個性俳優ジェフリー・ディーン・モーガン。その他兄役を演じたスウェーデン生まれのミカエル・パーシュブラントやイギリスの名優ジョナサン・プライスなど豪華な多国籍作品がここに生まれました。さらに悪役の片腕を演じたのがエリック・カントナ。そうフランスでは神様的存在の元プロサッカー選手。俳優としても素晴らしい存在感で、主演のミケルセンですら共演が夢のような出来事だったと語っております。
さてこの作品は、謳い文句にウエスタン・ルノワールという名をつけ新ジャンルという方向付けをしています。確かにアメリカの西部劇にはない雰囲気が冒頭のシーンから溢れ出しています。深みのある映像表現は、“パリ・テキサス““バクダット・カフェ”を思い出すもので、それだけでも画面に引き込まれてしまいます。テーマは復讐という古典的なものだが、主人公の内面に深く入り込んだストイックな表現は最後まで目が離せません。当時の厳しい移民生活が浮かび上がり、一瞬足りと気を許せない毎日が命がけというそんな緊張感に満ち溢れています。冗談ですが、こんな時代に生まれなくて本当に良かったと思えます。このウェスタン、何かを期待させてくれます。見終わった後からジワジワと染み込むような、重たいけど乾いていないそんな印象がした作品でした。