2015.May.11
映画にとって、音楽は欠かせない演出効果のひとつ。その音楽が主役の話題作”セッション”を鑑賞。古典と言ったらファンの方は怒るであろう、ジャズミュージック。ドラマーとして、その世界のてっぺんを目指すひとりの青年の生きざまと、その前に立ちはだかる鬼教師の壮絶な戦いが描かれています。目指す者と育てる者の究極のバトルが、音楽に対する思いの固まりとなり火花を散らす107分。ピ〜ンとはりつめた緊張感が見る側を画面に釘付けにする。そして最後までその緊張感が続き、ラストは・・・。この映画は今年のアカデミー賞で話題となり、3部門で栄冠を手にした。先日観た“バードマン”と最後まで争ったこの作品の監督は、弱冠28歳の新人監督デイミアン・チャゼル。この一作で鬼才の登竜門サンダンス映画祭グランプリを受賞し、その名を世界に印象づけた。この作品は出来の評価だけではなく、わずか19日間で撮影し完成された超低予算の作品というところが凄い。キャリアやお金だけがいい作品を生み出す訳ではないことを証明してみせました。テーマがシンプルな上、攻撃的な演出に合わせたドラムの鼓動との融合で魂を揺さぶられる。息が詰まるほど追いつめられた主人公の心拍が、ドラムの音となり波のように画面から溢れ出す。間違いなく傑作と呼べる作品である。アカデミー賞を争った“バードマン”もドラムの音が効果音として使われいて、何か因縁めいた感じさえうける。どちらの作品も、プロフェッショナルの流儀、またその拘りや厳しさを描き出してみせているのが似ています。甲乙付けがたい作品2作である。この作品でアカデミー助演男優賞を獲得した、鬼教師フレッチャーを演じたJ・K・シモンズ。スパイダーマンでお馴染みの編集長だが、その鬼気迫る芝居はなにか演技を超えた凄まじいほどのエネルギーを放ち、腰さへ引かされます。助演と言うより、主演といっていい存在感である。対する主人公アンドリューを演じたマイルズ・テラーも賞こそ名が上がらなかったが、繊細かつ力強い演技でシモンズと真っ向勝負をしています。とても優しい顔立ちで虫も殺さないような、線の細い青年だが顔つきがどんどん変わってゆく様は見事でした。これからが楽しみな俳優さんです。この作品は音楽や映画などプロを目指すひとには、いろいろな意味印象に残る優れもの。夢を追い戦いに挑む勇気が、ついに一線を越えるその瞬間を迎える。観賞後に極めるものたちは、ほんの一握りしかいないことを知らしめられる。そんな
選ばれしひとたちだけが、きっと究極の喜びを味わうことが出来るのだろう。一流のさらに上、超がつく世界の夢物語がここに描かれています。
P.S. とうとう199本という数字になりました。次回はついに200本目。さてどんな映画がわたしを喜ばせてくれるでしょうか?