2015.Jan.29
朝一だというのに、こんなに行列・・・とビックリの銀座裏通り。シネスイッチに観たかった“おみおくりの作法”を。それにしても凄いひとの数。見ればほとんどが中高年世代。わたしもそのひとりですが・・・。
今年に入ってまだひと月ですが、わたしの中で今年一番の作品といえるものになるやも知れぬ、そんな映画に出会ってしまいました。とにかく感動のひとことです。ほかには言葉が見つかりません。とても地味な生活をする、地味な民生委員のこころあたたまる生きざまに感動の涙、涙、涙。後半はもう我慢出来ずに、泣いて泣いてすぐに席を立てませんでした。見終わると一生とはと考えさせられる。作品は日常の中でひっそり終焉を迎える、大勢の孤独な人たちを見送るこころ優しい民生委員の物語。亡くなったひとたちの人生を探し、ひたすら黙々とその思い出を拾い集める主人公ジョン・メイ。こんな人間ってまだいるのかなァ〜ってさえ、思えてくる。まったく縁もゆかりもないひとたちの為に、こんなにも一生懸命にひとは生きた証を探せるものでしょうか?馬鹿がつくほど几帳面で、なんでそこまでやるかと思う反面、仕事に誇りをもち命の尊厳を守り抜こうとする姿にただただ感動です。
主人公ジョン・メイを演じたエディ・マーサン。まず、とても個性溢れる顔立ちに一度見たら忘れられない印象を受ける。そのもの静かな雰囲気と優しい眼差し。このひとじゃなければと思わせるくらいジョン・メイに同化していました。それだけ素晴らしい演技だったように感じるのは、あまりに自然体で目立たないが深い思いやりがにじみ出ていたからだ。イギリスの街並や田舎の風景の中、彼のたたずむ姿が実に絵になる。ワンシーン、ワンシーンが静寂の中、アルバムを開いていくような進み方がこころに沁みる。クラリネットだと思えるBGMの優しい音色にも、こころが癒される。何処にでも見かける在り来たりの風景だが、何気に美しい画面のトーンと音楽、そしてジョン・メイ自身の姿。やさしさに溢れたポートフォリオになっていて、静かで温かな感動を造り出しています。ひとつ違う意味でお気に入りのシーンがあります。それはある車にジョン・メイがおしっこをかけるところで彼のささやかな抵抗が・・・。こころの中でわたしは、小さくガッツポーズをしました。最後にジョン・メイについてひとこと。
彼の仕事は身寄の解らない遺体を弔う民生委員。だが真の仕事は、亡くなったひとたちの人生を辿り、絆を再生させる素晴らしい仕事だと思いました。ラストは間違いなく、忘れられない名シーンと呼べるものだと断言します。
わたしはまたひとつ、大好きなラストシーンを手に入れました。みなさん是非、劇場に足を運びその目で確かめてください。ひとりでも多くのひとに見て欲しい、ぜったいお薦めの作品。この感動をみなさんと共有したいと心底思うわたしです。
P.S. 映画を見終わったあと、フッと思い出した事が・・・。私事ですが、早くに母を亡くし思い出のあまりない自分ですが、その昔母の生涯ってどんなんだったのだろうと考えた事があります。区役所をまわり過去帳をひもとくように・・・。いろいろなことが見え始め、途中調べる事を辞めました。なにかいけないことをしているようで、えもしれぬ罪悪感みたいなものを感じたからです。後悔はしていませんが、元気な頃にもっと話をしていればと、こころの隅に閉じ込めました。そして生きています。これからも・・・。(余計な話でゴメンナサイ)
Shoji UEKUSA