2014. Nov. 10
近隣でやっている映画館で観たいものがなく、頑張って飯田橋まで・・・。ギンレイホールは歴史ある名画座。料金も安い上、見落としてしまった良作をチョイスし提供してくれるありがたい映画館。ただ、2本立と言うのが少しシンドイ。
たいていは1ッ本に絞り鑑賞しているが、今日は朝一で出かけ頑張って2本観ようと決めて来た。本当に観たかったのは“グランド・ブタペスト・ホテル”だったのだが・・・。やられちゃいました。
“インサイド・ルーウィン・デイヴィス(名もなき男の歌)”地味な物語ですが、じわじわと胸に沁みる作品でした。主人公は売れないフォーク・シンガーのルーウィン・デイヴィスという人物。聞く所によると実在したひとで、かのボブ・ディランが憧れた伝説のフォーク・シンガー「デイブ・ヴァン・ロンク」なるひとらしい。そのひとを題材にした、立った一週間の出来事が描かれている。1961年のニューヨーク・グリニッジ・ヴィレッジが舞台。歌を生業に生きる主人公の、ひたむきなまでの音楽(フォーク)への拘りと葛藤を、苦い生活の中から紡ぎ出し見せてくれる。演じた俳優オスカー・アイザックが、素晴らしい歌声と演技で圧巻である。ギターの腕前も半端なく、お世辞ぬきで最高です。憂いを秘めた瞳と、こころの奥底から絞り出すようなその歌声に完全にやられました。監督は今までにも数多くの名作を世に送り出した、コーエン兄弟。監督が彼を主役に使命したのは、きっと彼以外はこの役は無理と確信したからに違いありません。この作品も2013年カンヌ国際映画祭グランプリを受賞。これで4つ目の栄冠となり、映画界の名声を不動のものにしました。
1960年代はわたしたちにとっても、通り過ぎた青春の一ページ。フォーク・ソングがちまたでは大流行り。新宿駅前は多くの若者がギター片手に闊歩し、そちこちで路上ライブ。その原点とも言えるこの物語に、すっかり酔ってしまいました。当時の退廃した社会環境の中、貧しさゆえひたすら音楽と向き合いもがく主人公にこころ引かれます。いまの社会一般から観ると、自分勝手なダメダメ人間。そんな生活から這い上がろうと一度は覚悟をきめるが、やっぱり音楽にしがみつく。そんな人間が絞り出す歌だからこそ、ひとのこころに届くのだとしみじみ感じさせてくれます。脇を個性的な俳優さんたちがさりげなくかため、60年代を実にリアルに描き出してくれました。60年代生まれはもちろん、いまの若者たちにも、是非、見て欲しいと思います。そう言えば、最近続けて60年代を舞台にしたの作品(ジャージー・ボーイズ)が続き、昔に酔っている自分。何だかんだ年をとったのかなァ〜。やっぱり音楽の影響は大きいですね。
P.S. 恋人役ジーンをキャリー・マリガンが演じ、オスカー・アイザックとの小気味言いやり取りで女の強さや弱さそして優しさを魅せ、ますます好きになりました。はじめて彼女を知った“わたしを離さないで”は大好きな映画のひとつ。ギャッツビーの時の役は、猾くて嫌な女だったけど、凄く奇麗でした。いろんな顔を観せてくれる彼女をこれからも応援します。ライブハウスで彼女が歌う「ファイブ・ハンドレッド・マイルズ」は懐かしさで思わずウルウル。フォークソング万歳!!
★オスカー・アイザックの歌声をどうぞ。