2014. Oct. 21
久しぶりに銀座へ。候補の鑑賞作品が2つあり、迷ったが何となく元気になれそうな気がして“ウィークエンドはパリで”をチョイス。ところがどっこい、ユーモアを交えた会話の端々に結構重たいテーマが見え隠れし、考えさせられる要素がたっぷり。監督は“ノッティングヒルの恋人”で世界を魅了したロジャー・ミッシェル。その監督が15年間も暖めていた夫婦の絆がテーマの今作品。熟年期を迎えた夫婦たちの物語は、きっと熟成を迎えたワインの味のようなものかも知れないと、お酒の味も解らないわたしは観賞後にふっと思いました。
主演の二人(ジム・ブロードベント&リンゼイ・ダンカン)が実に見事である。長年連れ添った、酸いも甘いも知り尽くした夫婦を何とも言えない味わいで演じてくれる。ニック・バロウズを演じたジムは、頑固で融通の利かない堅物を豊かな表情で繊細に演じ、妻メグをリンゼイは、チャーミングな表情と大胆で歯に衣着せぬ言動でこれまた可愛らしい女性を魅せてくれました。壮年期の二人はまるで怖いもの知らず。と言うか怖いものみたさの大胆な行動とでもいうか・・・。きっと美しいパリがいままで貯めていたものが開放させ、無邪気な子どものようにわんぱくをさせただろう。凄く解ります。ハラハラドキドキの連続だが可愛くて微笑ましい。キワドイセリフも沢山出てくるが、ちっともイヤらしくない。辛辣だが本音の言葉はむしろ正直で清々しい。こんな夫婦にどうしたらなれるのだろう。
私はパリに行ったことがない。昨年のクリスマス、娘が研修旅行で訪れ土産話をたっぷり聞いたのもこの映画を選んだ理由のひとつ。画面から溢れる柔らかい光。その輝きに包まれた街並や石畳の風景が何とも言えぬ落ち着きと美しさで魅了する。
そんな場所に辿り着いたからこそ、きっと二人はまた愛を確かめ合うことが出来たのかも知れない。こんな美しい場所に行けば、みな正直になる。「永遠の愛などない」と思うひとは、是非観ましょう。
P.S. ニックの古い友人モーガンを演じたジェフ・ゴールドプラムについてひとこと。この役はこの映画になくてはならない重要な存在。物語がキュッと締まったそんな気がします。イケイケの役ではあるが、良い男です。“ザ・フライ”のハエ男とは思えません。あと、音楽の使い方が素晴らしく、パリの風景と見事に重なり哀愁を漂わせてくれました。また名匠ゴダール監督へのオマージュか、ラストで踊る3人のダンスシーンは最高でした。この夫婦、若い頃はきっとかなりやんちゃしていたと思います。※パンフの風景はプラザ・アテネのスイートルームからの眺め。一泊15万円だそうです???。
Shoji UEKUSA